かつて、私は落ちこぼれだった。
生まれながらに身体は弱く、
武の才覚は全くと言って良い程に無かった。
此の家の嫡流にして長子でありながら、嫡子の候補では無かった。
日々、弟たちや妹たちは修練を積むことが出来る身体が羨ましく、
日々、武術が上達するさまを見ては、兄として、長子として、
その役目を目に見えて担えていない事に、自分の存在意義を問うていた。
そんな時期もあった。
しかし、先の事とは分らぬもので、皆の推薦で私は此の家の当主と成った。
あまり前例の無い、非常に稀有なことであった。
先代と弟たち妹たちが盤上一致で、私を当主へ推薦してくれた事に、
私は涙が溢れた。
これまで、私に出来ることを少しずつ努めてきた。
『出来ぬからと、為せぬからと、負い目を覚えることは無い。
今、出来ることを少しずつ努めれば良い。』
両親から贈られた、私の礎となった大切な言葉。
だから、私は落ちこぼれであったが、落ちぶれることは居なかった。
今日まで支えてくれた、両親・弟たち・妹たち、
その姿をずっと見守ってくれていた、親しき人々には感謝しかない。
本当にありがとう。
これからは此の家の当主として、私に出来る役目を果たして行きます。
11/12/2024, 4:40:45 AM