kiliu yoa

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11/8/2024, 12:13:19 AM

「父上、何故ですか。何故、シモンを……。

 私から、何故……シモンを奪ったのですか。」

まだ、うら若き青年は感情の波を抑えながら、父に必死に抗議する。

父と呼ばれた、厳格な雰囲気を纏う男性は鋭い眼差しを青年に向ける。

「解らないか。」

突き離したように、冷たく男性は問う。

「理解出来ません。」

青年は、はっきりと鋭い眼差しで父に屈せぬよう宣言する。

「そうか、ならば…考えてみよ。

 何れ、其の問の解が解るようになる日まで。」

冷静に簡潔に確実に、男性は父としての役目を果たす。

「どういうことですか。」

青年は、冷静になるよう己に言い聞かせながら、必死に訴える。

「連れて行け。」

男性は、側近に命じた。

「承知しました。」

側近は、従順に命を遂行する。

「何故ですか。父上!」

青年は納得出来ず、必死に抵抗する。

「もう、お前に言う事は無い。」

男性は、青年に冷たく言い放つ。

野生の獣のような眼差しを青年は、父に向ける。

男性は鼻で笑い、青年を書斎から退室させた。













11/6/2024, 11:31:15 AM

「雨だ。」

私は思わず、そう呟いた。

朝の天気予報では、『今日は、一日中快晴です。』

と、予報士さんは言っていたように思う。

あの予報士さんは、今まで見てきた中では天気予報を外すことが無かった。

しかし、今日は外れたらしい。

なんだか、今日…このような瞬間に立ち会えて光栄思えた。

恥ずかしながら、この度外れて、初めてあの予報士さんの有難みを知った。

「ありがとう。いつも私のあたり前を支えてくれて。」

何となく呟いてみた、日々の感謝を込めた言葉を。


こんな感じに自分が感じていないだけで、

日々の自分のあたり前を支えてくれている、

数え切れない人々が居るのだな。

今、初めて気付いたよ。


見知らぬ人々、顔見知りの人々、親しき人々、いつもありがとう。



10/30/2024, 1:19:53 PM

「将来、わたしと結婚して。」

私が齢十八の成人して間もない時、まだ齢八の少女にプロポーズされた。

「えっ……。」

ここで気の利いた言葉を返せたのなら、

格好が付いたのだが、何せ、今生には全く縁のなかったことだったので、

私は驚いて、頭が真っ白となり固まった。

「あら、もしかして、ガールフレンドがいるの?」

彼女の大人びた回答に、周囲の大人たちは笑う。

前者は、腹を抱えて大笑いして彼女を称える者。

後者は、彼女のプロポーズを受けるべきだと賛成の意を示す者。


私の父は、彼女に問うた。

「なぜ、息子が良いと思った?」

彼女は、答えた。

「直感です。

 この人と結婚すれば、わたしは幸せになれる。そう直感しました。」

父は、満足そうに答えた。

「君は、見る目があるね。これは、将来が楽しみだ。」

そして、彼女の頭を撫でた。


それが彼女、私の妻となる人との出会いだった。



10/25/2024, 2:21:02 PM

身を落とし 初めて気付く 恵まれし 友に縋りて 良心知りぬる

10/23/2024, 1:03:53 PM

「芙蓉、あなたはいづれ天空を統べる鳶のように、

 我が家を統べることの出来る人にお成りなさい。

 そして、此の家の男(をのこ)より達観し俯瞰した視野をお持ちなさい。」

「はい、お母さま。」

お母さまは、わたくしたちの住む町を見下ろせる寺院でお話しして下さった。


その日は雲が少なく晴れ渡り、遥か彼方の天空まで見ゆることが出来た。


「今の世では、男、女(をみな)、と別ける考えは古いことを理解しています。

 しかし、男、女、とでは…やはり違うと母は思うのです。

 此の家では表立ってはいませんが、

 男より女の方がより強い力を有します。

 男より女の方がより深い教養、より達観し俯瞰した視野を求められます。

 それは、いつの世も男方が吾ら女を信頼して下さり、

 いつの世も男方が吾ら女より力と教養を有することを許し、尊重し、

 支えて下さっているのです。

 この事実を、決して忘れてはなりません。

 そして、此の家の皆に心から感謝をし、 

 言葉と行いで示すことが何よりも大切です。」

お母さまは、何時になく真剣に丁寧にそう仰せになった。

「はい、承知いたしました。」

自ずと、わたくしも真剣に丁寧にそう申し上げた。

「芙蓉、わが愛しき娘よ。

 もしも、あなたが此の家を継ぐことを望んでくれるのなら、

 どうか、此の家の者たちを頼みます。」

お母さまは、わたくしに目線を合わせて、

わたくしの両手を、お母さまの両手で包んで、そう仰せになった。

「わたくしは、幼き頃からお母さまの背を見てきました。

 わたくしでは及ばぬことも多いかと思いますが、

 心から此の家を継ぎたいと思っております。」

わたくしの言葉に、お母さまは涙されながら、

「ありがとう、本当にありがとう。」

と、嬉しそうに誇らしそうに仰せになった。



 



 


 

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