kiliu yoa

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「芙蓉、あなたはいづれ天空を統べる鳶のように、

 我が家を統べることの出来る人にお成りなさい。

 そして、此の家の男(をのこ)より達観し俯瞰した視野をお持ちなさい。」

「はい、お母さま。」

お母さまは、わたくしたちの住む町を見下ろせる寺院でお話しして下さった。


その日は雲が少なく晴れ渡り、遥か彼方の天空まで見ゆることが出来た。


「今の世では、男、女(をみな)、と別ける考えは古いことを理解しています。

 しかし、男、女、とでは…やはり違うと母は思うのです。

 此の家では表立ってはいませんが、

 男より女の方がより強い力を有します。

 男より女の方がより深い教養、より達観し俯瞰した視野を求められます。

 それは、いつの世も男方が吾ら女を信頼して下さり、

 いつの世も男方が吾ら女より力と教養を有することを許し、尊重し、

 支えて下さっているのです。

 この事実を、決して忘れてはなりません。

 そして、此の家の皆に心から感謝をし、 

 言葉と行いで示すことが何よりも大切です。」

お母さまは、何時になく真剣に丁寧にそう仰せになった。

「はい、承知いたしました。」

自ずと、わたくしも真剣に丁寧にそう申し上げた。

「芙蓉、わが愛しき娘よ。

 もしも、あなたが此の家を継ぐことを望んでくれるのなら、

 どうか、此の家の者たちを頼みます。」

お母さまは、わたくしに目線を合わせて、

わたくしの両手を、お母さまの両手で包んで、そう仰せになった。

「わたくしは、幼き頃からお母さまの背を見てきました。

 わたくしでは及ばぬことも多いかと思いますが、

 心から此の家を継ぎたいと思っております。」

わたくしの言葉に、お母さまは涙されながら、

「ありがとう、本当にありがとう。」

と、嬉しそうに誇らしそうに仰せになった。



 



 


 

10/23/2024, 1:03:53 PM