kiliu yoa

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8/31/2024, 2:44:43 PM

「兄さま、あなたの苦労は、僕が一番存じております。ですから……、」


「貴方に私の何が分かると言うのですか。

 兄のように、弟たちのように、貴方のように、

 私だって、天賦の才が欲しかった。

 永年、封じてきた羨望を、為せぬ苦しみを、支える身の葛藤を、

 そう分かったように仰せにならないで下さい。

 私が如何様な思いで、貴方を兄として支え、お守りしてきたか、

 貴方には、到底分からぬことなのです。

 いえ、解ったとしても、想像出来たとしても、

 我が身で経験してない人間が、そう簡単に仰せにならないで下さい。

 
 この、苦しみというには深い傷を負い、決して癒えることの無かった、

 その傷を隠し、恥じて生きてゆく身として、

 貴方に忠誠を誓う身として、唯一の願いにございます。」


8/21/2024, 2:19:49 PM

あなたは、白い隼のよう。

いつもまっすぐ、わたしのもとに来てくれる。

たくさんの愛情と色欲を注ぎ続け、わたしを満たしてくれる。

そして、貴方はわたしのもとをあっという間に去ってゆく。


それは、わたしが貴方の一番では、嫡妻では無いことを意味している。

わたしは所詮、妾に過ぎないことを如実に現している。


貴方が酷いひとなら、よかったのに。


貴方が酷いひとなら、鳥のように飛び立てたのに。

8/20/2024, 7:10:11 AM

夕空の 焼きつくやうな 陽光は 人目を憚ぬ 燃えゆ恋のよう

8/15/2024, 6:10:44 AM

「これが自転車っていう乗り物なのね。」

「乗れるようになるには、練習が必要なんだ。乗れたら、便利だよ。

 風が気持ち良いし、何より歩くより長い距離を進める。」

「ふふふ、とっても素敵ね。わたしも乗れるかしら?」

「その服装じゃ危ないから、乗馬服の方がいいよ。」

「あら、ワンピースはいけないのね。」

青年はしゃがみ込み、ペダルの歯車を指差す。

「この小さい歯車見える?」

少女も、ペダルの歯車を覗き込む。

「うん!見えた。凄く小さいのね。」

「この歯車にスカートの裾が巻き込まれる事故が有ったらしい。

 だから、スカートは避けた方が無難だと思う。」

「ふふふ、ありがとう。じゃあ、着替えてくるわ。」

「分かった。ここで待ってる。」

 





8/14/2024, 4:33:16 AM

「なに?その楽器。」

「琴っていうの。東方の国の歴史ある楽器よ。とっても綺麗でしょ。」

「ふーん、誰かに貰ったの?」

「ええ、愛するひとから貰ったの。
 
 あのひとは、わたしの好みをよく理解しているひとなの。」

「愛する人って?何人もいるじゃん。」

「清の人よ、彼はとっても優しくて、繊細な文化人なの。」

「ああ、元夫の。離婚したのに、仲良いんだ。」

「互いに望まぬ、離婚だったから。

 ……様がわたしを祖国に呼び戻したかったから、彼とは離婚したの。」

「色々あるんだね、高貴な人にも。」

「ええ、たくさんあるの。あなたたちにも、たくさんあるようにね。」


「あら?どうしたの、拗ねちゃって。」

「僕より、その人のことが好きなの?」

「そうね…、難しいこというのわね。少し、考えるわ。

 うーん、あなたと彼とでは愛情の種類が違うの。

 だから、比べられないわ。

 彼とあなたのことは同じくらい愛してるの。

 これだけは、確かなの。」


「あらら、そんなに頬を膨らませて。

 怒らせる気はなかったの、ごめんなさいね。」











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