「なに?その楽器。」
「琴っていうの。東方の国の歴史ある楽器よ。とっても綺麗でしょ。」
「ふーん、誰かに貰ったの?」
「ええ、愛するひとから貰ったの。
あのひとは、わたしの好みをよく理解しているひとなの。」
「愛する人って?何人もいるじゃん。」
「清の人よ、彼はとっても優しくて、繊細な文化人なの。」
「ああ、元夫の。離婚したのに、仲良いんだ。」
「互いに望まぬ、離婚だったから。
……様がわたしを祖国に呼び戻したかったから、彼とは離婚したの。」
「色々あるんだね、高貴な人にも。」
「ええ、たくさんあるの。あなたたちにも、たくさんあるようにね。」
「あら?どうしたの、拗ねちゃって。」
「僕より、その人のことが好きなの?」
「そうね…、難しいこというのわね。少し、考えるわ。
うーん、あなたと彼とでは愛情の種類が違うの。
だから、比べられないわ。
彼とあなたのことは同じくらい愛してるの。
これだけは、確かなの。」
「あらら、そんなに頬を膨らませて。
怒らせる気はなかったの、ごめんなさいね。」
8/14/2024, 4:33:16 AM