「兄さま、あなたの苦労は、僕が一番存じております。ですから……、」
「貴方に私の何が分かると言うのですか。
兄のように、弟たちのように、貴方のように、
私だって、天賦の才が欲しかった。
永年、封じてきた羨望を、為せぬ苦しみを、支える身の葛藤を、
そう分かったように仰せにならないで下さい。
私が如何様な思いで、貴方を兄として支え、お守りしてきたか、
貴方には、到底分からぬことなのです。
いえ、解ったとしても、想像出来たとしても、
我が身で経験してない人間が、そう簡単に仰せにならないで下さい。
この、苦しみというには深い傷を負い、決して癒えることの無かった、
その傷を隠し、恥じて生きてゆく身として、
貴方に忠誠を誓う身として、唯一の願いにございます。」
8/31/2024, 2:44:43 PM