kiliu yoa

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11/23/2023, 11:23:13 AM

息を深く、吸う。

息を吐きながら、中段に刀を構える。

眼の前の相手は、私と互角の強さ…いや、私より強い。

此れは、一騎討ちなのだ。

少しだけ、心と身体をつなぐ糸を切る。

かつての、痛みを感じぬ身体に戻す。

この糸を完全に絶ち切っては、ならない。

絶ち切ってしまうと、そう簡単には…つながらない。

最初は、相手の出方を見る。

相手の攻撃を受け流しながら、相手の隙を伺う。

私の動きは、ゆっくりだ。

徐々に間合いを詰めていく。

その間、私は仕掛けない。

相手の集中が切れた、その時、相手の防御に隙ができる。

相手は、私のゆっくりした動きに慣れている。

そうすると、隙を突く、速い動きには…付いて来れなくなる。

そこを狙うのだ。

速さの濃淡と、でも言うのだろうか。

私の刃は、相手に届いた。

相手の肉を削ぐ、音、香り、感覚が……鮮明に脳裏に焼き付く。

相手の胸から腹にかけて、深く斬った。

相手の表情は、穏やかなものだった。

「安らかに眠れ。」

他に、なんと声を掛ければ……良いのだろう。

私は、首切り処刑人だった。

人を殺すことには、慣れている。

しかし、言葉に表せられぬ、気持ちが湧き出て……止まらない。

思考が停止する。気持ちを切り換えねば……。


嗚呼、そうか、初めて罪のない人を殺したからか。

もしかすると、これが俗に言う、罪悪感なのかもしれない。













11/21/2023, 12:56:08 PM

さぁ?

その主君の言葉に、私は頭を抱える。

いい加減にしろ!

内心、激情に駆られた。そして、声に出ていた。

眼の前に居る男こと、主君はゲラゲラ笑っていた。

あなたの、こういうところが嫌いだ!と内心、悪態をついた。

落ち着け、私。

主君は、原来こういう人間だ。

無茶振りは、今に始まったことでは無い。

この手のものは、ある種の限界突破である。

認めたくないが、この経験のおかげで、

心身ともに成長できるのも、また事実なのだ。

さぁ、頑張るか。

今日も、我が主君のために。






















11/20/2023, 10:35:56 AM

それは、わたしの愛するもの。

それは、わたしの守るもの。

それは、やがて、わたしのもとを旅立つもの。

それは、ほんの僅かしか、その時を必要としないもの。

そのものは、わたしに多くを与えてしもの。

そのものは、わたしの心の温もり。


しろかねも、しろかねも、くがねも、たまも、なにせむに、

まされる宝、子にしかめやも。            
                        山上 憶良


この歌ほど、わたしの宝物を表すものを、わたしは知らない。




11/18/2023, 4:29:35 PM

私は、あなたを愛している。

私は、あなたの後夫。

あなたを一族に、主君に、縛りつけるために、

あなたは、私と婚姻させられた。

あなたは、時に涼しく、時に暖かく、優しく穏やかに流れる、

そよ風のような人だった。

だから、きっと、あなたは多くの愛人が居るのだろう。

決して、冷たくせず、熱くしない。

その距離感が、丁度良く、心地良かった。

私は、あなたに遠く及ばない。

知や武の才では、あなたより劣る。

あなたと私では、不釣り合いのはずなのに……。

あなたは、私を夫として、一番に愛する人として、扱ってくれる。

それが、なによりも嬉しかった。

























11/16/2023, 3:09:02 PM

その時が、いつ来るのか。

私には、分かりかねます。

ややこしい言い方をしましたね。

私には、分かろうとしても出来ません。

恐らく、私は人より多く、その時を経験したのですが、

未だに全くと言っていいほどに、その領域には達していません。

未来とは、私は未だ知りません。

だから、きっと恐ろしく、魅惑に満ち、予想外のことが起こるのでしょう。

それは、時に大海原の帆船に強い風が吹くように、

それは、時に底無し沼に重しを付けて落とされるように、

突然に現れる。

でも、だからこそ、その時が不幸とは限らない。

だからこそ、その時の経験が、活きる時が訪れる。

これだから、生きることは止められない。

これだから、人生は面白い。

どんな、運命も来るが良い。

どんなに堕ちようとも、どんなに苦しくとも、

私は、決して、生きることを諦めない。

何故なら、私は知っている。

この暗闇は、必ず晴れることを知っている。

その後の人生は、大きく変化し、喜びに満ちることを知っている。








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