あの夢のつづきを
あの長い夢。
夢だったのかと言われたら、夢じゃない気もする。
それすらも分からなくなるほど長い長い夢。
寒い冬、君が好きだと言っていた雪が降っていた。
最後の一ヶ月、君は病室から眺める事しかできなかったね。
部屋は暖房で暑いくらい暖かかったのに、
君は「寒いね」 。
そう泣きながら言ったけど、何を思って泣いてたの?
最後に何がしたかったの?
やり残したことはあった?
聞いとけばよかった。
でも、それを言ってしまえば、
本当に最後のようで、受け入れたくなかった。
だけど、1番受け入れたくないのは君だったね。
別れの日、走って、君の声を聞きたくて、病室まで行ったけど、君は最後に涙を流して笑顔で眠ったね。
体は冷たくなっていった。
あの大好きな雪と同じになれたかな。
こっちは夏、すごく暑いよ。
でもね、雪が溶けても、どんなに暑い夏が来ようが、
僕の中の季節はずっと冬だよ。
君と一緒に
君と一緒にやりたい事ならいっぱいあった。
クリスマスを一緒に過ごすこと、
一緒に年越しをすること。
ずっと一緒に居ようねって約束、叶わなかったね。
あの夜、一つの星しかなかった夜空の下で、
君は大粒の涙を零しながら、「別れよう」
なんて言ったけれど、君は一体何を思っていたの?
私と一緒に居たのがそんなに辛かったの?
それとも、他に理由があったの?
そう言われた時、私は初めて外の寒さに気づいたよ。
手も足も冷たくて、息は白くて、目から溢れる涙は温かかったな。
君の一番星になれなくても、
私の目が見える限り、私の中の一番星はずっと君だよ。
幸せとは
「幸せ」って何だと思う?
そう問う私に、「君と居ること。」と言った。
そんな貴方は、結局別の女の人のところへ行ったね。
私と居るのが不幸だったから?
「浮気」この言葉があるから浮気となるけど、この言葉がなかったら一体どうなるのか。
「美人」と「不細工」、美人なんて言葉がなかったらきっと不細工なんて言葉はない。
それと同じで、「幸せ」なんて言葉があるから「不幸」が目立つ。
「幸せ」は「不幸」じゃないことなのか、 幸せがあったら不幸もある、所詮「幸せ」と「不幸」は紙一重なのか。
はたまた幸せと不幸は共存するものなのか?
答えは自分の中にあって、他人が決めることじゃない。
そんな事わかっていながら、貴方が言った幸せの意味、
それを私は未だに信じてるよ。
涙の理由
君のその涙に、理解はするが納得はできなかった。
「彼氏が浮気をしていた」
そう僕に泣きついて来た君に、僕は背中をさすることしかできなかった。
さすっている間も、僕は納得できずに考えていた。
僕が恋人だったら泣かせないのに。
僕が恋人だったらずっと君だけを見続けるのに。
それに、泣きついてきた上、僕に抱きついている君。
その彼氏とまだ別れてもいないのに、たかが男友達に抱きついている。傍から見たら恋人同士だし、僕から見たら君も立派な同罪だ。
そんな感情をひた隠して、僕は君を見下ろしている。
君は、いつたかが男友達じゃない事に気づくのか。
きらめき
流れ星とは一瞬だ。
いつの間にか現れて、
瞬きする間なく過ぎ去る。
でも、その過ぎ去る瞬間までがまるでスローモーションの様に見える。
あの時僕達が出会ったときもこんなふうだったと思う。たまたま君は転校してきて、
たまたま君は僕の隣の席に座った。
そしてたまたま僕と仲良くなった。
全て偶然だったのかも知れないし、
必然だったのかも知れない。
君が何も言わず急に転校していったことも。
転校する前日、二人屋上で話をしていた時、君は急に言いだした。
「私、君のことが好きなんだ。」
その時はただただ嬉しかった。
だけど、君は
「返事はいらないよ、友達だから。」
と言った、泣きそうな顔で、言い聞かせるように。
君は、父親の仕事の都合で何度も土地を転々としていて、友達が居ないと言っていた。
だから僕はあの日友達になった。
僕は、友達という関係に甘えてたのかもしれない。
君だってそうだったと思う。
友達だって言い聞かせて、いつかまた転校する時が来ると分かったうえで友達ごっこを続けてた。
だけど、今考えたらそれで正解だった。
そうしてくれて、良かったんだと思う。
だってこの先一生会えなくなる相手に好意を伝えても、苦しくなるだけだろうから。
僕達は偶然出会っただけで、
ただ一瞬の一目惚れだっただけで、
いつかは流れる星に夢を抱いていただけだった。
そう言い聞かせて、心を捻じ曲げようとしても、涙だけは止められなかった。