ブラックサンダー

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7/16/2023, 12:40:57 PM


自由に生きて、いつも笑っていたあなた。

地元を離れた私は、貴方が亡くなった事を7年も経ってから知りました。

喧嘩して。打ちどころが悪かったなんて。

まさにヤンチャな貴方らしい。

……あの時、もう会えないと知っていたなら。

あの日、お互い気付いていながら知らないフリをしていたあの時に。

一番可愛い顔をして、挨拶すればよかったね。

私の青春、私の初恋の人。

この空の向こうで、今も憎めない笑顔で居ますか?

私は、もう随分……貴方より大人になりました。

7/15/2023, 11:40:07 AM



「幸せになるんやで」

あの時は、死ぬほど悲しくて。

貴方のその優しい声に嘘が無いんだと疑わず。
馬鹿な私はそれから何年も貴方を忘れられず苦しんだ。

君は完璧すぎるほど、素敵な女性だったと私に囁いて離れて行ったひと。

随分長い時間を経て、私はようやっと気がついた。

それほど私を好ましく思っていたのなら、貴方はあの時私たちに立ちはだかった壁に、立ち向かったはずなのだ。

終わりにしよう、別れようと言って、私に泣かれるのが嫌で、煩わしくて出た言葉を信じ。

何年も貴方を恋しく思った私は、なんていじらしくて可愛くて……純粋だったんだろう。

同じ壁を、今の恋人は簡単に飛び越えた。
腕をかけてよじ登り、擦り傷をおった腕で私を引き上げて壁を乗り越えた。

あの時貴方にどうして?と壁を乗り越える事を求めなかった私。

何故か……?
貴方がそれを受け入れないとどこかで解っていたからだった。

今の彼には、それを求めた。
何故か……、?

言わずとも、彼がそうすると信じていたから。

終わりにしよう、そう言われるなんて考えられ無いほどの愛に出会えた。

あの時、貴方と離れた私は。
苦しんだけれど、正しい道を選べたのだ。


7/14/2023, 10:45:23 AM


娘の障害を知った時、絶望と恐怖に戦いた後。

私は彼女と手を取りあって生きて行くのだと意気込んだ。

逃げられない戦いだから。

私が彼女の手をしっかり握って導くのだと心に決めた。

それから数年。

少しずつ、少しずつ、歪みと境界線を彷徨い。

手を取り合ったままではいけないと、気付いた。

……私は先に死ぬのだから。
ずっとこの先も、彼女の手を握り続けて居られない。

手を離せる様に、彼女が自分の足だけで進める様に。

いつかこの手を離せる様に。

少しずつ、少しずつこの手を緩めなくては。

彼女を泣かす事もあるだろう。
手を取りあったそれを、背中に添えるだけに変えて。
時には囁く声だけに替えて。

……進もう。
いつでも手を取り合える距離で。

彼女の笑顔に助けられ、彼女は私の笑顔と声に助けられ。

手を、気持ちを取り合って……進もう。

7/12/2023, 10:10:28 AM



逃げ出したいんだ。

全て無かった事にしたい。

ここじゃないなら、僕を知ってる人が居ない場所ならどこでもいい。

甘えでも、我儘でもないよ。

僕は出来る限りで、やれるだけの事をしてきたんだ。

これまでずっと。

周りの友達みたいに自由に生きた事なんてない。

ずっと、これまでずっと。

自分じゃない誰かの意思で生きてきたんだ。

もう限界だよ。

こんな...こんな理不尽な決めつけと恐怖の中で生きてなんか行けない。

相手の顔も名前も、知らされずに一方的に投げつけられる誹謗中傷。

ずるいよ、卑怯だよ。

僕が何をしたって言うの。

ありもしない事実を作り上げて、アナタ達が掲げた正義に踏みにじられた僕の世界。

やつけてやったと誇ればいい。
あいつは悪だと笑えばいい。

だからお願いだ。

もう僕を自由にして。
忘れて。

二度と...思い出さないで。

これまでずっと僕が大切に抱えて来た世界をあげるから。

もう、僕を見ないで欲しいんだ。

7/11/2023, 10:28:32 AM


その通知音は他と、なんら変わりない軽さで俺の意識を引き寄せた。

公式LINEがほぼの、俺のそのアプリの使用頻度はもう何年も変わらない。

十代や二十代ではない。

友達と暇があればやり取りをしていた時代はもう遠く、仕事でも滅多に使わないその通知音は、鳴ってもチラリと横目で相手を確認してそのまま……。

通知は三桁近い。

見ないならブロックでもミュートでもすれば良いのだろうが、それすらも億劫な程俺の日常は怠惰だった。

恋人と別れたのはもう二年前、それからその緑のアイコンは俺にとってほぼ飾りに近い。

『若菜』

ソファーにだらしなく座り、撮り溜めた映画を見るとも無く見ていた俺は、一瞬見間違いかと固まった。

別れたのは二年前。

……そんなはずはない。

しかし。
俺は別れた恋人若菜をブロック出来ず非表示にしていただけだった。

ハードワークで疲れた目が、見間違いをするより高い可能性。

何故かソファーの端で落ちそうになっているその小さな機械に手を伸ばせず俺はそれと睨み合っていた。

『二年待ってくれ、その頃には俺昇進してるはずだから、そしたら君に構ってやれる』

『構ってやれる?別に無理に構って"貰わ"無くても大丈夫よ』

仕事に熱中して彼女を独りにし過ぎた俺に、彼女は愛想をつかした。

外は茹だるような暑さで。
ちょうど、こんな休みの...久しぶりに二人の時間を持てた日の事だった。


……二年。
二年経っていた。

怒って部屋を出て行ったきりの彼女。
ちょうどそれを追い掛けず見送ったその場所で。

俺の死にかけていた感情が騒ぎ出した。


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