「幸せになるんやで」
あの時は、死ぬほど悲しくて。
貴方のその優しい声に嘘が無いんだと疑わず。
馬鹿な私はそれから何年も貴方を忘れられず苦しんだ。
君は完璧すぎるほど、素敵な女性だったと私に囁いて離れて行ったひと。
随分長い時間を経て、私はようやっと気がついた。
それほど私を好ましく思っていたのなら、貴方はあの時私たちに立ちはだかった壁に、立ち向かったはずなのだ。
終わりにしよう、別れようと言って、私に泣かれるのが嫌で、煩わしくて出た言葉を信じ。
何年も貴方を恋しく思った私は、なんていじらしくて可愛くて……純粋だったんだろう。
同じ壁を、今の恋人は簡単に飛び越えた。
腕をかけてよじ登り、擦り傷をおった腕で私を引き上げて壁を乗り越えた。
あの時貴方にどうして?と壁を乗り越える事を求めなかった私。
何故か……?
貴方がそれを受け入れないとどこかで解っていたからだった。
今の彼には、それを求めた。
何故か……、?
言わずとも、彼がそうすると信じていたから。
終わりにしよう、そう言われるなんて考えられ無いほどの愛に出会えた。
あの時、貴方と離れた私は。
苦しんだけれど、正しい道を選べたのだ。
7/15/2023, 11:40:07 AM