おはよう。今日は朝からこんなに食べれたのよ!
おはよう。今日は天気がいいわね。外はあつかった?
おはよう。窓を開けてくれる?とても気持ちいい風ね。
おはよう。昨日の担当の人は新人さん?すぐ顔おぼえちゃったわ。
おはよう。今日は旦那が来る予定なの。先生のお話があるんですって。
おはよう。もうこの朝ごはんさげてもらってもいいかしら?
おはよう。昨日は咳がひどくてなかなかねれなかったのよ。
おはよう。横向きになりたいわ。
おはよう。今日もよろしくね。
おはよう。
おはよう。
おはよう。
………
「おはようございます。本日の担当します。よろしくお願いします。やっとお家に帰れますね」
@病室
@明日、もし晴れたら
そろそろ干からびるかもしれない
今 声大きすぎたかな
今 笑うとこ?
今 話かけていいのかな
この話いつまで聞いたらいいのかな
あー
もう なんも考えたくない
帰ってビールのもう
@ だから、一人でいたい
店内のキラキラした様子に少し居心地が悪かった。店員さんと話しながら、テーブルの上に並べられた4種類の指輪を眺めては自分の指にはめて、はめた指輪を眺めてはまた置くという行動を繰り返している。
気に入った物を選んで欲しい。だから黙って見守っているんだけれども。キラキラした雰囲気に少し耐えられなくなってきたのも正直な所ではある。
これはまだもうしばらくかかるかなと思い窓の外を眺めた。とても天気が良く、散り始めた桜の花びらがヒラヒラと風に舞っている。来年の同じ日に結婚式を予定している。その記念に婚約指輪を買いに来たのだが、桜を見るたびに思い出しそだな考えていた。
「これにする。どう?」
それはピンク色の桜の花びらをモチーフにした可愛らしいデザインだった。
「ああ。それでいいと思うよ」と指にはまる桜をみて思わず笑みが溢れてしまった。
「やっと決まったって適当に返事してない?」
居心地の悪さが伝わっていたのだろうか、少し不満げに眉根を寄せている。
「ちがうよ。僕もそれがいい。桜を見るたびに君を思い出しそうだ」
@それでいい
彼の部屋に置いている私ものモノは炭酸水だけだった。
お互いの関係に名前はない。
たまに仕事帰りに彼の家に来ては、歩いて8分の家に朝方帰るという日々をずるずる続けていた。
彼の事がすきだった。一緒にいたかった。
彼からの連絡が来ると世界で一番幸せなのは私だと思えた。
私物を置いて行っていいなんて、もう会えなくなりそうで聞けなかった。
温かさを求めベットに潜り込もうとした時、マクラの横に固い金属の塊を見つけた。手に取ってみると見た事のない髪留めだった。もちろん私のものではない。
手の先から冷えて行くのを感じた。
わかっていたの。なんとなく。
でも決定的なモノが無かったから。
翌朝、おはようと起きた彼に向かって笑顔で金属のモノを投げつけた。
「もう来ないよ」
そのまま玄関をでて、自分の家を目指す。
最近で一番晴れやかな気持ちだった
歩きながら彼の連絡先を消去し、賃貸情報の検索を開始した。
これは私にとってハッピーエンドだ。
@ハッピーエンド