おもち

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 店内のキラキラした様子に少し居心地が悪かった。店員さんと話しながら、テーブルの上に並べられた4種類の指輪を眺めては自分の指にはめて、はめた指輪を眺めてはまた置くという行動を繰り返している。

 気に入った物を選んで欲しい。だから黙って見守っているんだけれども。キラキラした雰囲気に少し耐えられなくなってきたのも正直な所ではある。
 これはまだもうしばらくかかるかなと思い窓の外を眺めた。とても天気が良く、散り始めた桜の花びらがヒラヒラと風に舞っている。来年の同じ日に結婚式を予定している。その記念に婚約指輪を買いに来たのだが、桜を見るたびに思い出しそだな考えていた。

「これにする。どう?」
それはピンク色の桜の花びらをモチーフにした可愛らしいデザインだった。
「ああ。それでいいと思うよ」と指にはまる桜をみて思わず笑みが溢れてしまった。
「やっと決まったって適当に返事してない?」
居心地の悪さが伝わっていたのだろうか、少し不満げに眉根を寄せている。

「ちがうよ。僕もそれがいい。桜を見るたびに君を思い出しそうだ」



@それでいい

4/4/2023, 1:38:09 PM