Yushiki

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9/23/2023, 8:09:59 AM

 しくしくと誰かが泣いている。
 地面に座り込み、背中を丸め、顔を俯けている誰かが見えた。
 その人の姿を見ていたら、いてもたってもいられなくなって、私は駆け寄る。

 丸まった背中に柔らかく手を置いて、私もその人の隣にしゃがみ込んだ。

「どうしたの?」

 私がそう尋ねても相手は顔を上げない。しゃくり上げ、嗚咽を漏らし、涙に濡れ続けている。

 そのうち吐息のような小さな声がこぼれた。
 私はそっとその声に耳を澄ます。

「怖いの」

 詰まるような声音で、ただそれだけが聞こえた。

 私は泣き続ける背中を何度も摩る。

「大丈夫だよ」

 私の声に相手が反応して顔を上げた。目を赤く腫らしたその表情を見て、私はああと納得する。

「でも、怖いのが止まらないの」
「なら、そのままの貴方でいいよ。大丈夫、絶対に大丈夫だから」

 私はニコリと微笑みかける。相手は驚いたのか目を丸くさせていた。

「どうしてそんなことが分かるの?」
「だって貴方は私だから」

 私は彼女を抱き締める。包み込むようにぎゅっと、その震える肩を守るように。

「貴方の怖さも寂しさも、全部私のものだから」

 だから帰って来て。

「もう私は大丈夫だから」



【声が聞こえる】

9/22/2023, 9:10:37 AM

 穏やかな風が吹き抜ける。
 隣を歩く彼女が心地好さそうに、長い髪を揺らしていた。
 過ぎ去って行く夏の空気に、僕は少しだけ後悔している。
 たくさんあった夏の思い出の中、僕は彼女と多くの時間を共有した。あんなにも一緒にいて、二人きりになる一時だってあったはずなのに、僕は未だこの胸にしまう気持ちを取り出せないままだ。
 夏の暑さに浮かれれば、その勢いで言えるかもなんて、淡い期待までしていたのに。僕の意気地の無さは予想以上だったらしい。

「もうすぐ秋だねぇ」

 柔らかに口元を綻ばせた彼女が、嬉しそうに言う。

「別に夏は夏で嫌いじなかったけど、私、秋って好きだなぁ」
「まあ、気温も過ごしやすくなるしね」
「ほら、秋って景色が色付く季節でしょ? だから、すごくいいなって思うの」

 彼女は何故だか首だけを僕の方に向けて、嬉しそうにはにかんだ。


「きっと綺麗で楽しいよ」


 そう告げた彼女の笑顔が、まるでスロモーションのようにゆっくりになって、僕の瞳に焼き付く。

 ああ、まいったなぁと、内心で溜息をつきながら、僕は表情に出さないよう何とか耐えた。

 秋の涼しさに当てられても、自分の中に燻る熱までは冷めないようだ。
 そんな自覚を改めてしてしまえば、僕の心は早くも鮮やかに色付き始めていた。



【秋恋】

9/21/2023, 3:43:30 AM

ありがとう
捨ててしまいたいと思っていた僕の人生に
君が現れてくれたおかげで
君が寄り添ってくれたおかげで
僕は初めて僕の人生を
大事にしたいと思ったよ



【大事にしたい】

9/19/2023, 11:23:58 PM

 ふと鏡を見ると、老けたなーって思う。
 毎日の忙しさに追われ、自分を顧みる余裕などない。
 けど、ふと何気なく気を抜くと。
 そこにいる自分の。
 昔とは違う顔つきに愕然とする。
 
 ああ、もう。頼むから。
 時間よ止まれ。
 そして何にもしなくていい長い休息日を私にくれ。

 そんなことを日々夢見ることもある。

 でも、いいよね。
 夢見たってさ。

 夢見る時くらい、時間が止まったような錯覚にとらわれても。
 それくらいは、大目にみてほしい。

 だってこんなに、頑張ってるんだから。



【時間よ止まれ】

9/18/2023, 11:13:06 PM

今まで色々な景色の中に僕はいたことがあったけど。

君が隣に居た時に見た何の変哲も無い夜の街の風景が。

何故か一番思い出す回数が多いんだ。



【夜景】

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