君にただ知ってもらいたかったんだ。
僕が君にどれだけ救われてきたかを。
この視界いっぱいに映る花たちの数だけ、僕の気持ちは君にある。
それをどうか忘れないで。
【花畑】
空から降り注ぐ土砂降りの雨は、今朝からずっと止まないままだ。
悲しみをずっと内に抱えながら、とうとう耐えきれずに泣き出してしまったかのような、その激しく打ち付ける雨粒を、僕は窓辺からそっと眺めていた。
僕の代わりに泣いてくれているのだろうか。
そう思ってしまうほどに強く耳に響く雨音に、僕は何だかつられて泣いてしまいそうだった。
【空が泣く】
ねえ
いま何してる?
見てよこれ
かわいいでしょ?
次から次へと送られてくる君からのLINE。
通知音が鳴るたびにドキドキして。
返したら返したで既読がついたかどうか、ハラハラしながら見守る。
心はこんなにも忙しなくて、大変なのに。
やめたくないからやめ時がわからない。
君からじゃあまた明日と。
一言返してくれれば引けるのに。
それがないのは。
スマホの向こうにいる君も。
僕と同じ気持ちなのかなと。
そんな淡い期待をしてしまうから。
幸せな焦りで。
僕はまた。
君へと返すメッセージを考える。
【君からのLINE】
「特別だ。君にどの道がいいか選ばせてあげよう」
目の前に佇む奇妙な男が不敵に笑う。
「のんびりと楽な生活のまま長生きできるけど、一生孤独な道。または険しく困難だけれども、誰からも賞賛されて名誉な地位を築ける短命な道。あとは金持ちになれるけど病気がちとか、貧乏だけど身体は丈夫っていう道もある」
さあ、どうする?
男の問い掛けに俺は「どちらでも」と、素っ気ない態度で答えた。
男は「そんな適当でいいのかい?」と、心配もしてなさそうな声音で言う。
「選ぶのに意味なんてないだろ。いい道なんてどこにもありはしないんだから」
生きてるうちはいつだって、何かと戦うもんなんだ。だから──。
「俺はただ俺の前に続く道を行くだけだ」
命が燃え尽きる、その日まで。
【命が燃え尽きるまで】
誰もが寝静まった静かな時間。
私はひとり窓辺に寄って、夜明けが来るのを待っている。
闇色が明るい光に照らされて、色を変えるその瞬間。
私は何だか胸に空いた寂しい気持ちが包み込まれたような、許されたような気持ちになるのだ。
きっと地平線から上って降り注ぐ朝日だけは、生きとし生けるもの全てを平等に、照らして行ってくれるからかもしれない。
【夜明け前】