ねえ
いま何してる?
見てよこれ
かわいいでしょ?
次から次へと送られてくる君からのLINE。
通知音が鳴るたびにドキドキして。
返したら返したで既読がついたかどうか、ハラハラしながら見守る。
心はこんなにも忙しなくて、大変なのに。
やめたくないからやめ時がわからない。
君からじゃあまた明日と。
一言返してくれれば引けるのに。
それがないのは。
スマホの向こうにいる君も。
僕と同じ気持ちなのかなと。
そんな淡い期待をしてしまうから。
幸せな焦りで。
僕はまた。
君へと返すメッセージを考える。
【君からのLINE】
「特別だ。君にどの道がいいか選ばせてあげよう」
目の前に佇む奇妙な男が不敵に笑う。
「のんびりと楽な生活のまま長生きできるけど、一生孤独な道。または険しく困難だけれども、誰からも賞賛されて名誉な地位を築ける短命な道。あとは金持ちになれるけど病気がちとか、貧乏だけど身体は丈夫っていう道もある」
さあ、どうする?
男の問い掛けに俺は「どちらでも」と、素っ気ない態度で答えた。
男は「そんな適当でいいのかい?」と、心配もしてなさそうな声音で言う。
「選ぶのに意味なんてないだろ。いい道なんてどこにもありはしないんだから」
生きてるうちはいつだって、何かと戦うもんなんだ。だから──。
「俺はただ俺の前に続く道を行くだけだ」
命が燃え尽きる、その日まで。
【命が燃え尽きるまで】
誰もが寝静まった静かな時間。
私はひとり窓辺に寄って、夜明けが来るのを待っている。
闇色が明るい光に照らされて、色を変えるその瞬間。
私は何だか胸に空いた寂しい気持ちが包み込まれたような、許されたような気持ちになるのだ。
きっと地平線から上って降り注ぐ朝日だけは、生きとし生けるもの全てを平等に、照らして行ってくれるからかもしれない。
【夜明け前】
ああ、本当に馬鹿だなぁ。
自分には絶対に届かなくなってから。
あれが本気の恋だったんだと気付くなんて。
涙が止めどなく落ちるほど。
私の心がこぼれていくみたいで。
それがまたどうしようもなく悲しいのに。
貴方に出会わなかったら。
今の私はないのでしょう。
あんなに幸せな日々が。
私にもあったのだと。
誇れることもなかったのでしょう。
【本気の恋】
今月は祝日は何日あるのかな、とか。
給料日まであと何日あるのかな、とか。
そんな理由でしかじっと見ないカレンダーを、今月はちょっと違う気持ちで眺めている。
赤い丸に囲われたその特別な日に、僕は一世一代の告白をする。
何にも勝るその日が、早く来て欲しいような、来て欲しくないような。
そんな曖昧さを抱えながら日にちを数える僕の手のひらには、指輪の入った小さな箱が開けられるのを今か今かと待っている。
【カレンダー】