Yushiki

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7/12/2023, 10:26:36 PM

 これまでずっと。
 纏わり付いてくる君が嫌いだった。
 一人にして欲しいのに。
 君は僕を見付けると、どんなに遠くにいても駆け寄ってくる。

 放っておいてほしい。
 僕は一人でいるほうが好きだし。
 他人といるのは煩わしくて、落ち着かないのに。

「どうして僕に近付くの?」

 ある日、そう尋ねてみる。
 君はあまり考え込む素振りもみせないで。

「だって君は、人の中に入るのがあまり好きそうではないから」

 だから。
 私から手を伸ばすの。

 いつか君が誰かに手を伸ばしたくなった時。
 すぐ届く距離に誰かがいたら、伸ばしやすいでしょう?

 これまでずっと。
 纏わり付いてくる君が嫌いだった。
 一人にして欲しかったのだ。
 僕は一人では生きられない弱い人間だから。

 そんな自分が誰かに知られたらと思うと不安で、たまらなく思っていたのに、君はそんなこと大したことないみたいに言って笑う。

「私がね、これまでずっと、そうだったの」

 一人ぼっちで居続けることを選んでいたの。

「けどね、一人だけ居てくれたんだよ。私に手を伸ばし続けてくれる人が」

 だから。
 今度は私がその一人だけになろうと思って。

 だから。
 これは私の自己満足な偽善なの。
 だから。
 君は私のことを嫌いでもいいんだよ。

 ただ側にいることだけ、覚えていてくれれば。
 
 これまでずっと。
 頑張っていた君が。
 一人でいたい時も、一人じゃないことを忘れないでいて欲しいから。



【これまでずっと】

7/11/2023, 10:25:57 PM

 未読のLINEが1件。
 スマホの画面の隅にそんな通知が先程からちらついていた。

 ああ、どうしよう。
 早く返信しなければと思いながら、未だうだうだと迷って開けずにいる。

 これを読んでしまったら、何かしらの関係性が僕とメッセージの相手との間に成り立ってしまう。
 ここから今よりも良い関係に変化するかもしれないが、自分やもしくは相手までもを傷付けてしまう可能性だってある。

 僕は誰かと繋がることが苦手だ。
 それと同時に、ひどい孤独感に日々苛まれている。
 人生とはままならぬもの。そうは分かっていても、僕は矛盾ばかりを身に貼り付けながら、今日もLINEの新着メッセージを、おそるおそる待ち侘びている。



【1件のLINE】

7/11/2023, 9:34:01 AM

 目が覚める。
 そこはいつもと同じ場所。
 みなれた部屋に、みなれた家具。
 ふとカーテンが開いていた窓の外。
 向こう側に広がる景色も、いつものみなれた街並みの様子。

「おはよう」

 誰ともなく呟いて、見慣れた世界の新しい日に、今日も出会えた奇跡へ感謝する。



【目が覚めると】

7/9/2023, 11:43:28 AM

 こっちに行けば安心なのに。
 あなたはあっちに行きたいと言う。
 私は、嫌だよ、怖いもん、と首を振るが、あなたは、大丈夫だから、と、何の根拠もなくそんなことを言い放ち、こちらへと手を差し伸べてくる。
 私はおそるおそるその手を取り、あなたの言う通り、私が行こうと思っていたのと反対の方へ行ってみた。
 途中、やっぱりこっちに来なければ良かったとか、あなたのせいで大変な思いをしているとか、後悔したり、八つ当たりしたりと、散々な時もあったけれど。

 いつの間にか私はあの時は安心だと思っていた方向よりも、嫌で怖くて仕方のなかった方向へ、よく曲がるようになっていた。

 あんなに嫌で怖かったのに。
 今はあまりそうでもない。
 きっとこんなふうにこれからも、誰かの力を借りたり、何かの影響を受けながら、私は嫌で怖かったことを、当たり前のように、嫌でも怖くもなくなっていくのかもしれない。



【私の当たり前】

7/9/2023, 8:25:47 AM

 太陽が沈む夕暮れ時。
 街中に、ぽつり、ぽつり、と明かりが灯っていく。
 家族が揃った光景に。
 大切な人を迎えたのだろう誰かの日常に。
 今日も僕は胸をほっこりさせて帰路に着く。

「おかえりなさい」
「ただいま」

 そうして僕も。
 そのほっこりする街の明かりの一部となった。



【街の明かり】

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