Yushiki

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 これまでずっと。
 纏わり付いてくる君が嫌いだった。
 一人にして欲しいのに。
 君は僕を見付けると、どんなに遠くにいても駆け寄ってくる。

 放っておいてほしい。
 僕は一人でいるほうが好きだし。
 他人といるのは煩わしくて、落ち着かないのに。

「どうして僕に近付くの?」

 ある日、そう尋ねてみる。
 君はあまり考え込む素振りもみせないで。

「だって君は、人の中に入るのがあまり好きそうではないから」

 だから。
 私から手を伸ばすの。

 いつか君が誰かに手を伸ばしたくなった時。
 すぐ届く距離に誰かがいたら、伸ばしやすいでしょう?

 これまでずっと。
 纏わり付いてくる君が嫌いだった。
 一人にして欲しかったのだ。
 僕は一人では生きられない弱い人間だから。

 そんな自分が誰かに知られたらと思うと不安で、たまらなく思っていたのに、君はそんなこと大したことないみたいに言って笑う。

「私がね、これまでずっと、そうだったの」

 一人ぼっちで居続けることを選んでいたの。

「けどね、一人だけ居てくれたんだよ。私に手を伸ばし続けてくれる人が」

 だから。
 今度は私がその一人だけになろうと思って。

 だから。
 これは私の自己満足な偽善なの。
 だから。
 君は私のことを嫌いでもいいんだよ。

 ただ側にいることだけ、覚えていてくれれば。
 
 これまでずっと。
 頑張っていた君が。
 一人でいたい時も、一人じゃないことを忘れないでいて欲しいから。



【これまでずっと】

7/12/2023, 10:26:36 PM