こっちに行けば安心なのに。
あなたはあっちに行きたいと言う。
私は、嫌だよ、怖いもん、と首を振るが、あなたは、大丈夫だから、と、何の根拠もなくそんなことを言い放ち、こちらへと手を差し伸べてくる。
私はおそるおそるその手を取り、あなたの言う通り、私が行こうと思っていたのと反対の方へ行ってみた。
途中、やっぱりこっちに来なければ良かったとか、あなたのせいで大変な思いをしているとか、後悔したり、八つ当たりしたりと、散々な時もあったけれど。
いつの間にか私はあの時は安心だと思っていた方向よりも、嫌で怖くて仕方のなかった方向へ、よく曲がるようになっていた。
あんなに嫌で怖かったのに。
今はあまりそうでもない。
きっとこんなふうにこれからも、誰かの力を借りたり、何かの影響を受けながら、私は嫌で怖かったことを、当たり前のように、嫌でも怖くもなくなっていくのかもしれない。
【私の当たり前】
7/9/2023, 11:43:28 AM