こんばんは。
今夜、大切な人に会えましたか。
私は残念ながら
遠距離中の彼氏とは
今月は会えずじまいです。
でも、一年もこの日を心待ちにしていたはずの
あなた達が出会えたのなら
私も幸せです。
どうか
その逢瀬を楽しんで。
私もまた大好きな人に会える日を願いながら
今日の星空を見上げます。
【七夕】
よっ。
元気か?
お前いっつもそれ食ってるよなー。
この前おまえがすすめてくれたマンガ、めっちゃおもしろかったわ。あれ、続きないの?
どうした? 落ち込んでんの?
俺でよければ話聞くぜ。
まあ、おまえって、そういうとこあるよなー。
俺は嫌いじゃないけどさ。
あれ、もうこんな時間か。
悪ぃ、長居しちまった。
それじゃあな、元気だせよ。
またなー。
ふと思い出すのはそんな他愛もない会話ばかり。
劇的な出来事も、熱い語り合いもあったわけじゃないし、もう会わなくなって久しいけれど。
それでも、やっぱり。
いつかまた思い出すのは、きっとそんな日々のこと。
【友だちの思い出】
暗い夜闇に迷わぬように
僕らは揺るがないあの小さな輝きを
指標にして彼の道を進む
暗い夜闇で寂しくないように
僕らの頭上に散りばめられた
あの小さな星々へ
寄り添ってくれてありがとうと
笑いながら指を差す
きっとあの小さな星々の中にも
僕らと同じ夜空を仰ぐ誰かがいて
今夜もこちらを見上げて笑いながら
明日の日を思い旅をしている
闇の中にいる僕らだけれど
決してひとりぼっちじゃないんだと
星空の下で夜を想う
【星空】
サイコロを投げる。
出た目の数だけマスを進める。
誰もが知っている双六ゲームだ。
双六ゲームは盤上にどんなマスがあるのかが一目で分かる。何の目を出せば進むに止まり、何の目を出せば戻るに止まるか、一回休みになるかなど。
つまりゴールに至るまでのマス目の数が分かれば、合計で何回サイコロを振れば辿り着くのか、おおよそ分かってきてしまう。
その何回かに起こる余興を、楽しむゲームと思えばいいのかもしれないけれど。
それではいつか、つまらなくなるだろうから。
俺はイカサマなしで、純粋に振っただけの目を、知り得ることができる側になりたい。
だってそれだけが唯一、神様だけが知っているものだから。
【神様だけが知っている】
「この道の先には、あなたにとっての輝かしい未来が待っています」
俺は力を込めてそう言い放ち、ニコリと微笑む。
そうすると、俺の前にいた若者がぱっと明るい笑顔を浮かべ、躊躇っていた足を進ませて前方へと去って行った。
この流れを、毎日延々と繰り返す。
それが、今の俺の仕事だった。
何も知らない無垢な輩を、この道の先に進ませる。この道の先に何があるのかなんて、全くもって知らないのだけれど、そんなことは俺にとってはどうでもいいことだった。
ただ与えられた仕事をこなし、給料を貰う。
それだけできれば、あとは誰がどうなろうが興味もない。
そんなことを考えていたら次の奴が来た。そいつは長い裾のコートを羽織り、フードを目深に被っていて顔が見えない。男なのか女なのか、はたまた若者なのか老人なのか、何も判断がつかないけれど、俺は気にせずにすっかり慣れきってしまった口上を述べる。
「この道の先には、あなたにとっての輝かしい未来が待っています」
言ったあとはいつだって、不安に覆われていた目の前の人物の表情がいくらか晴れる。そうして躊躇していた足を進ませていくのがお決まりの流れ。現在俺の前にいるこいつの顔は、暗く翳って隠れているが、それでも変わらずそのまま道の先へと進んでいくものだろうと、その時までの俺はそう思っていたのだけれど。
「・・・・・・輝かしい未来?」
そいつはいっこうに足を動かさない。それどころか、予想外にこちらへ話し掛けてきた。
「本当にそんなものが、待っているんですか?」
「・・・・・・ええ、もちろんですよ。何も不安がらず、どうぞお進みください」
愛憎のいい笑顔を浮かべた裏で、こいつは面倒臭いなと俺は舌打ちをする。
さっさと進めばいいものを。どうせここを通る奴らに、進む以外の選択肢などありはしないのだから。
俺は半ばぞんざいにそいつへ前進を促した。そいつはコートのポケットへ徐に手を入れると、影になった表情を俺の方へと向ける。
「そんなもの、どこにもありませんでしたよ」
次の瞬間、ズドンっ、と重い音が鳴り響いた。
驚く間もなく、俺の胸に焼け付くような熱さが、一気に広がっていく。
「・・・・・・お、まえ・・・・・・っ!」
俺は胸元を抑え、数歩退いた。そいつの右手からは硝煙をのぼらせる黒い銃口が伸びていた。
「あなたは、無責任だ」
ごぼり、と俺は血を吐いた。後ろへよろけて背中から地面に倒れ込む。
「そして、無関心だ」
銃口を突き付けるそいつが、倒れた俺を見下ろすようにして立っている。
「無責任と無関心は、時に誰かを殺します」
夥しい量の血液が胸から溢れてくる。俺は霞む視界と意識の中であいつの低い声を聞いた。
「この道の先に誰かを歩ませたいなら、まずはあなたが前を行くべきです」
銃口は未だ俺の方を向いていた。カチリという不穏な音が俺の耳に響く。
「未来を語れるのは、未来を作ったことがある人だけですから」
ズドンっと激しい銃声が一発鳴った。
放たれた二発目の銃弾が俺の胸をさらに抉るが、その時の俺はもう、完全に息を引き取っていた。
【この道の先に】