僕の母はいつも言っていました。
あなたのお父さんは薄情な人なのよ。こんな手紙一枚きりしか連絡を寄越さないんだから。どこで何をやってるかちっともわからないわ、と。
父は僕が小さい頃に家を出てしまい、それから一度も会ったことがありません。世界中を回る仕事をしているそうですが、詳しいことはわからないんです。
母は父の文句ばかり言っていましたけれど、最期まで父から届いた手紙を大事にとっていました。その手紙を読み返している時の母は、とても安らかな瞳をしていたように思います。
ああ、すみません。話が長くなってしまいましたね。今日は母の墓に花を手向けに来ていただきありがとうございました。母も昔の友人が会いに来てくれたと知ったら、喜んでくれると思います。
僕がそうお礼を言うと、母の墓前に佇む母の友人である彼は、深く頭を下げて涙をこぼした。
【安らかな瞳】
大好きです。
愛しています。
あなたを。
だから、わたしは行きます。
あなたがいるこの地を。
守るために。
わたしはあなたの側を離れるけれど。
心はずっと隣にいます。
そう、ずっとです。
だから、待っててとは言いません。
ただ、どうか。
忘れないでほしいんです。
【ずっと隣で】
知識をひとつ持つことは
可能性をひとつ生んだことと同義である
知識をひとつ学ぶことは
知恵をひとつ身に付けたことと同義である
知識を無数に求めることは
人間のみの唯一の特権である
だから私は
もっと知りたいのだ
【もっと知りたい】
かけがえのない日々がいつまでも続くように
そう願いながら今日も戦ってる
平穏な日常を価値あるものだって分かるのは
いつだって困難に立ち向かい
感謝できる者なんだ
【平穏な日常】
君が銃口を向けた先には
君にとっての敵がいる
けれど
君にとってのその敵は
君の父親をかつて助けた恩人の
その息子かもしれない
あるいは
君にとってのその敵は
君がいつか愛する誰かにとっての
大切な兄弟かもしれない
そんなことを知らぬまま
その引き金を引くなんて
引かなければならない状況になるなんて
それはなんて不幸なことなんだろう
願わくばどうか
尊敬する父の恩人へ
愛する伴侶の兄弟へ
冷たく固い銃口ではなく
このあたたかな手の平を
互いに差し出していける
そんな世界になってほしい
【愛と平和】