恒星さくら

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12/25/2024, 6:04:41 AM

【イブの夜】

12月24日 女は陰鬱な夜を過ごしていた
時折顔をしかめ苛立っていた
「まだかしら…」
気を紛らわそうとテレビをつけるが、映し出されたものもほとんど目に入らない
「あぁ、もう耐えられない…」

そんな時、玄関の呼び鈴が鳴る
女はドアを開け、立っている男の顔を見ると泣き出しそうになる
「やっと来てくれたのね… 遅いよ」
「ごめん 君が欲しがってるものが見つからなくて」
「ううん、いいのよ」
女は男の手から紙袋を受け取る

「これでいいんだよね?」
不安げな顔で様子を伺う男
「そう これ! 」
女の顔がパッと明るくなった

「あぁ、しんどかった もう歯が痛くて」
女はそう言ってイブと書かれた鎮痛剤の箱を開けた

12/23/2024, 10:03:31 PM

【プレゼント】

男は超能力を持っていた
物を動かす力 サイコキネシスと言うやつだ

「メリークリスマス〜」
やたらとテンションの高い女が言った
「あぁ、メリークリスマス 随分と機嫌がいいな」
「え〜、世の中みんな浮ついてるよ〜 今年は何をくれるのかな? 楽しみ!」
もらえるのが当然と思ってるらしい
「あれ? なんか急にお腹が… おトイレおトイレ」
女は腹痛を訴えトイレに駆け込む
「ふぅ〜 なんか急にお腹に来たよ なんだろ? まぁ、いいや はい!クリスマスプレゼント! マフラーだよ〜 すごく寒くなってきたからね」

「今年もマフラーなのか笑」
昨年も一昨年もマフラーだったのだ
「いいのいいの 気分が変わっていいでしょ?」
まぁ、確かにな 「ありがとう」

「俺のプレゼントはどうだった?」
「えええ! まだもらってないよ???」
「いや、もう渡したよ」
「え? いつ???」
「君がさっきトイレに行った直前さ」
女は訳が分からないと言った表情をする

「今年は君の好きな食べ物のフルコースだ 胃に直接送っておいた」
「嘘でしょ! さっきのあれ??? ちょっと! 照れて受け取ったり、開けて喜んだり、 大好き!って抱きついたり、そういう工程全て飛ばしたってこと?!」

「お前はすでに消化している」
「ケンシロウ風に言うなw」




12/16/2024, 5:45:30 AM

【雪を待つ】

男は山小屋に来ていた
年末年始の連休を利用しての雪山登山だ
連れ立ったものはおらず単独での登頂となる

「ふぅ 疲れたな 今日はここで夜を過ごそう」
男は今年で35歳 会社ではそろそろ役がついていい頃だが、いまだに入社から立場は変わっていない
同期の者たちとの差が男を疲れさせた

「久し振りの登山で少々不安もあったが、まだまだ若いな俺も」
乾燥した笑みを浮かべてつぶやいた
「小屋も暖まってきたし、少し寝ておくか」
軽く食事をとり男は眠りについた

風の音で目覚める男
「いつの間にか吹雪いているな これならもしかして」
そんな時 小屋のドアを叩くような音がした
「ん? 今の音は? 風で枝でも飛んできたか?」

ドンドン ドンドン
「違うな 登山者か? 鍵なんかかかってないが」
ドアを開けると、雪よりも白いと思えるような女が立っていた

「本当に…」
女は何も言わず頷く
「ありがとう 迎えに来てくれて」
男は女に手を取られ猛吹雪の中に消えていった

12/13/2024, 11:52:49 PM

男はとあるバーに来ていた
ここはいくつも前の時代に存在した酒を飲むための場所で女性がそれをより楽しくさせてくれるようなものとは違っている
まぁ、女性が楽しませてくれると言う点においては変わらないと言えるが

「今日はどのようなものがよろしいですか?」
営業マンみたいな口調の店員だが、こんなところではそれがむしろ助かる

「そうだな 今日は最近流行りのものでもお願いするかな」
特にこれと言って飲みたいものもなく疲れていたのもあって選択を面倒に思ったのだ

「では、こちらの愛シリーズなどいかがでしょう」
新しいものをと言うことで気の逸る営業マンのように即座に答えてきた

「ふむ、愛シリーズねぇ じゃあ、この中から作ってもらうとしよう」
特段シリーズものに興味もなく、カタログを適当にめくりながら答えた

この店”愛樹”が提供するもの それはエキス
多くは語らないが、女性が楽しませると言えば察しもつくだろう

「ん? この子 めぐみ?」
愛シリーズの中で異彩を放つめぐみの名
「では、この子にしてもらおうか」
「かしこまりました」
マスターの顔に戻ってるな

グラスにめぐみのエキスを注ぐのを眺めながら聞いた
「なぁ、マスター この子はめぐみなのに、なんで愛シリーズの中にいるんだ?」

「あぁ、愛と書いてめぐみと読むのですよ」