恒星さくら

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【雪を待つ】

男は山小屋に来ていた
年末年始の連休を利用しての雪山登山だ
連れ立ったものはおらず単独での登頂となる

「ふぅ 疲れたな 今日はここで夜を過ごそう」
男は今年で35歳 会社ではそろそろ役がついていい頃だが、いまだに入社から立場は変わっていない
同期の者たちとの差が男を疲れさせた

「久し振りの登山で少々不安もあったが、まだまだ若いな俺も」
乾燥した笑みを浮かべてつぶやいた
「小屋も暖まってきたし、少し寝ておくか」
軽く食事をとり男は眠りについた

風の音で目覚める男
「いつの間にか吹雪いているな これならもしかして」
そんな時 小屋のドアを叩くような音がした
「ん? 今の音は? 風で枝でも飛んできたか?」

ドンドン ドンドン
「違うな 登山者か? 鍵なんかかかってないが」
ドアを開けると、雪よりも白いと思えるような女が立っていた

「本当に…」
女は何も言わず頷く
「ありがとう 迎えに来てくれて」
男は女に手を取られ猛吹雪の中に消えていった

12/16/2024, 5:45:30 AM