作品No.202【2024/10/19 テーマ:すれ違い】
思わず、振り返っていた。すれ違ったその人が、知り合いに似ていた気がしたから。
「こんな場所にいるはずないのに」
呟いて、歩き出す。他人の空似なんて、よくある話だ。
それなのに、何度も振り返ろうとしてしまう。追いかけて、声をかけたくなってしまう。それを抑えて、抑え付けて、歩を進めた。
作品No.201【2024/10/18 テーマ:秋晴れ】
白く大きな入道雲から
小さな羊雲や鱗雲に変わった
ような気がする
この島にも確実に
〝秋〟が訪れているようだ
晴れよりも 雨の方が多いけれど
作品No.200【2024/10/17 テーマ:忘れたくても忘れられない】
忘れたいことだらけだ
いやなことぜーんぶ
忘れたいのに
いやなことほど
ずっとここに残ってる
作品No.199【2024/10/16 テーマ:やわらかな光】
隣の部屋から、音が聴こえる。時計を見ると、午前二時ピッタリ。お隣さんの、いつもの日課だ。壁に背を預け、壁に耳を当てて、私はしばらくその音に耳を傾けることにする。
優しいメロディーが、時折止まり、変化し、戻り、進み、を繰り返す。
こうして作業をすることを、謝られたこともあった。でも私は、この時間が何よりも癒しだったから、そのまま続けてほしいとお願いした。
今夜の曲は、ひたすら優しい。あたたかく、やわらかな光に、この身が包み込まれているようだ。
目を閉じて、私はその音に身を委ねたのだった。
作品No.198【2024/10/15 テーマ:鋭い眼差し】
あなたのその、鋭い眼差しが苦手だ。だから私は、なるべく近づかないようにしていた。あなたから、逃げて逃げて、避け続けた。
今なら、わかる。
今だから、わかる。
あの目を恐れ、あなたから逃げた私は愚か者だ。もう二度と戻らなくなってから気付くなんて、とんでもなく莫迦だ。
もう二度と、あなたがその目で私を見ることはない。触れることもない。語りかけることもない。
そうなってからやっと、あなたのあの眼差しが恋しくなるなんて。