作品No.137【2024/08/15 テーマ:夜の海】
歩道橋からは、遠く海が見える。闇色の、夜の海だ。本当は、青く輝く晴れた昼間の海の色の方がすきだけれど。
夜の海は、ひたすら暗い。昼の眩しさが嘘のようだ。
あの海がおそろしいと思うのは、夜だからなのか、それとも、海自体がおそろしいのか。
少なくとも、夜に海に寄ろうとは思えなかった。
作品No.136【2024/08/14 テーマ:自転車に乗って】
夏休み。
母方の祖母の家の敷地内にある駐車場で、自転車の練習をしていた。結構な坂道を往復しては、時間を忘れて乗り回していた。
そんな私達を、祖父がそっと見ていた。目が合うと、素知らぬ様子でいなくなってしまう。おそらく、祖父なりに見守ってくれていたのだろう。今思えば、見た目はこわかったけれど、不器用でシャイな人だったのかもしれない。私達姉妹と、従妹に、自転車を買ってくれたのも祖父だった気がする。
そんな祖父が亡くなって、十年以上の月日が流れた。
もうすぐ旧盆が始まる。祖父もきっと、曾祖母と帰ってくるだろう。
自転車なんて、もう乗り方も忘れてしまったけれど。
あの夏の、祖父のことは、なんとなく今も思い出す。
作品No.135【2024/08/13 テーマ:心の健康】
すきな本読んで
すきな曲聴いて
すきなモノに触れている
とりあえず
私の場合は それで
心の健康は回復するんじゃないかな
作品No.134【2024/08/12 テーマ:君の奏でる音楽】
ああ、言わなきゃよかったなぁ。
ずっと近くで見てきたんだ、きみがどれだけそれを大切にしているのか、僕は知っていたはずなのに。そして、きみが僕のことも、大切にしてくれているって、僕はわかっていたはずなのに。
僕、と、音楽——きみにとってはどちらも同じくらい大切で、優劣なんてなくて、どちらが上でどちらが下かもなかったはずで。
なのに、僕は。
比べてしまった。
どちらかを選び取るよう、きみに要求してしまった。
それが、きみを追い詰めた。
きみの奏でる音楽は、今日もいろんな場所で漂い流れる。スマートフォンからも、テレビからも、ラジオからも。まるで、きみを悼むように。
まるで、僕を責め立てるように。
作品No.133【2024/08/11 テーマ:麦わら帽子】
我が家のラックの一番上に
ずーっと置きっぱなしの
麦わら帽子
家族の誰もかぶらない
無意味な置物
いい加減 捨てようかな
うちの自治体では燃えるゴミ
みたいだし
でも
母がきっと
後生大事に
取っておこうとするんだろうな