帰燕[Kien]

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8/15/2024, 2:29:13 PM

作品No.137【2024/08/15 テーマ:夜の海】


 歩道橋からは、遠く海が見える。闇色の、夜の海だ。本当は、青く輝く晴れた昼間の海の色の方がすきだけれど。
 夜の海は、ひたすら暗い。昼の眩しさが嘘のようだ。
 あの海がおそろしいと思うのは、夜だからなのか、それとも、海自体がおそろしいのか。
 少なくとも、夜に海に寄ろうとは思えなかった。

8/14/2024, 2:56:35 PM

作品No.136【2024/08/14 テーマ:自転車に乗って】


 夏休み。
 母方の祖母の家の敷地内にある駐車場で、自転車の練習をしていた。結構な坂道を往復しては、時間を忘れて乗り回していた。
 そんな私達を、祖父がそっと見ていた。目が合うと、素知らぬ様子でいなくなってしまう。おそらく、祖父なりに見守ってくれていたのだろう。今思えば、見た目はこわかったけれど、不器用でシャイな人だったのかもしれない。私達姉妹と、従妹に、自転車を買ってくれたのも祖父だった気がする。
 そんな祖父が亡くなって、十年以上の月日が流れた。
 もうすぐ旧盆が始まる。祖父もきっと、曾祖母と帰ってくるだろう。
 自転車なんて、もう乗り方も忘れてしまったけれど。
 あの夏の、祖父のことは、なんとなく今も思い出す。

8/13/2024, 2:08:42 PM

作品No.135【2024/08/13 テーマ:心の健康】


すきな本読んで
すきな曲聴いて

すきなモノに触れている

とりあえず
私の場合は それで
心の健康は回復するんじゃないかな

8/12/2024, 2:13:37 PM

作品No.134【2024/08/12 テーマ:君の奏でる音楽】


 ああ、言わなきゃよかったなぁ。
 ずっと近くで見てきたんだ、きみがどれだけそれを大切にしているのか、僕は知っていたはずなのに。そして、きみが僕のことも、大切にしてくれているって、僕はわかっていたはずなのに。
 僕、と、音楽——きみにとってはどちらも同じくらい大切で、優劣なんてなくて、どちらが上でどちらが下かもなかったはずで。
 なのに、僕は。
 比べてしまった。
 どちらかを選び取るよう、きみに要求してしまった。
 それが、きみを追い詰めた。
 きみの奏でる音楽は、今日もいろんな場所で漂い流れる。スマートフォンからも、テレビからも、ラジオからも。まるで、きみを悼むように。
 まるで、僕を責め立てるように。

8/11/2024, 2:35:37 PM

作品No.133【2024/08/11 テーマ:麦わら帽子】


我が家のラックの一番上に
ずーっと置きっぱなしの
麦わら帽子

家族の誰もかぶらない
無意味な置物

いい加減 捨てようかな

うちの自治体では燃えるゴミ
みたいだし

でも
母がきっと
後生大事に
取っておこうとするんだろうな

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