帰燕[Kien]

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8/12/2024, 2:13:37 PM

作品No.134【2024/08/12 テーマ:君の奏でる音楽】


 ああ、言わなきゃよかったなぁ。
 ずっと近くで見てきたんだ、きみがどれだけそれを大切にしているのか、僕は知っていたはずなのに。そして、きみが僕のことも、大切にしてくれているって、僕はわかっていたはずなのに。
 僕、と、音楽——きみにとってはどちらも同じくらい大切で、優劣なんてなくて、どちらが上でどちらが下かもなかったはずで。
 なのに、僕は。
 比べてしまった。
 どちらかを選び取るよう、きみに要求してしまった。
 それが、きみを追い詰めた。
 きみの奏でる音楽は、今日もいろんな場所で漂い流れる。スマートフォンからも、テレビからも、ラジオからも。まるで、きみを悼むように。
 まるで、僕を責め立てるように。

8/11/2024, 2:35:37 PM

作品No.133【2024/08/11 テーマ:麦わら帽子】


我が家のラックの一番上に
ずーっと置きっぱなしの
麦わら帽子

家族の誰もかぶらない
無意味な置物

いい加減 捨てようかな

うちの自治体では燃えるゴミ
みたいだし

でも
母がきっと
後生大事に
取っておこうとするんだろうな

8/10/2024, 2:57:32 PM

作品No.132【2024/08/10 テーマ:終点】


特に目的もなく
バスに揺られて
たどり着いた終点

初めて見る場所
なのに
なんの感慨もわかない

また来た道を戻るだけ

8/9/2024, 2:17:32 PM

作品No.131【2024/08/09 テーマ:上手くいかなくたっていい】


上手くいかないことばかり

何事にも不器用で
何をやっても上手くいかない

上手くいかなくたっていい

なんて
自分自身にかけたところで
ただのなぐさめ
ただの自己弁護

もう少し上手く
この世界を泳げたらいいのにね

8/8/2024, 2:51:34 PM

作品No.130【2024/08/08 テーマ:蝶よ花よ】


 蝶よ花よと、大切にされたこともあった。それさえも、遠い昔の話になってしまったけれど。
 あの頃は、自分がこの世で一番美しいと信じていた。万人に愛されて当然だ——と。
 でもそれは、ひと時の夢幻だった。
 あの頃の私を知る人がなくなり、この世に残されて幾年月。色艶を失った身体だけが、私として存在している。
 美しい私は、もういない。私を愛でてくれる人も、もういない。
 いつまで、生きていればいいのだろう。失っていくばかりなのに、虚しいばかりなのに——いったい、いつまで。

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