帰燕[Kien]

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8/7/2024, 2:22:34 PM

作品No.129【2024/08/07 テーマ:最初から決まってた】


 きっと最初から決まってたんだと思う。
 私がこんな人間になることとか、そういう——〝人生〟とか〝運命〟みたいなモノ。
 過去も現在も未来も全部、何かが最初っから決めてて、その台本の上を動き回ってる——みたいな。
 そう思うことがある——というより、そう思う方が楽なんだと思う。
 誰かの決めた筋書きの上で、与えられた役割のまま動く方が、自分で考えて動くより何倍も楽だから。

8/6/2024, 2:43:16 PM

作品No.128【2024/08/06 テーマ:太陽】

※半角丸括弧内はルビです。


「なんで」
 目の前には、もう動くことのない、彼の身体。私が、私だけが、非現実な世界にいるような、感覚がした。でもそれが、錯覚だってわかっていた。
 これは、現実だ。いくら私が認めたくなくても、目の前のこれは紛れもなく本当で本物だ。
「なんで、あんたがこうなってんの」
 彼の声が、頭の中で響いている。「夢蘭(ゆら)は、僕の太陽なんだ。いつも輝いてて、照らしてくれて、導いてくれるから」——そう、言っていた彼の声が。
「太陽——か」
 頭(かぶり)を振って、私は笑ってみせた。現実逃避? それとも、彼に心配かけまいとしての行為? どちらも、違う。
 これは——自嘲だ。
「あんたにとって、私が太陽だったみたいに」
 私の中で、いつも輝いてて、照らしてくれて、導いてくれたのは——他ならぬ、あんただったよ。それはずっと、変わらないと、代えられないと、思っていたのに。
「私にとってあんたも、かけがえのない太陽だったよ」

8/5/2024, 2:57:47 PM

作品No.127【2024/08/05 テーマ:鐘の音】


 店先で鳴る呼び鈴の音。私と姉は立ち上がって、裏口の戸を開ける。
「おばあちゃあん!」
 そう呼ぶと、祖父の愛人——祖母の皮肉混じりの称号だ——である黒イヌのルーが吠える。そして、洗濯をしていた祖母が走ってくる。
「お客さん!」
「はいはい」
 祖母が店に戻るのを見届ける前に、私達はドアを閉める。

 これが、小学生の頃、夏休みの私達姉妹の日常だった。
 今はもう、祖父はいないし、ルーもいない。祖母がやっていたお店は、大元の会社の倒産をきっかけに閉店した。祖母は元気だが、最近体調がよくないことも多い。
 もうあの呼び鈴の音が鳴ることはないだろうが、あの夏の日々は、今よりずっと輝いていた思い出のひとつだ。

8/4/2024, 2:53:50 PM

作品No.126【2024/08/04 テーマ:つまらないことでも】


つまらないことで
泣き
笑い
怒り
感情豊かに表情に出していた日々

今や遠い過去の日々

8/3/2024, 2:36:39 PM

作品No.125【2024/08/03 テーマ:目が覚めるまでに】


 夢、だったらいいのに。
 もう二度と、私を映してくれない瞳。もう二度と、私の名を呼んでくれない口。もう二度と、動かない身体。
 あなたの命の火が消えてしまったこと、全てが夢だったらいいのに。
 眠って起きたら、あなたが傍にいる——その日常が、戻ればいいのに。
 私が明日、目が覚めるまでに。

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