作品No.128【2024/08/06 テーマ:太陽】
※半角丸括弧内はルビです。
「なんで」
目の前には、もう動くことのない、彼の身体。私が、私だけが、非現実な世界にいるような、感覚がした。でもそれが、錯覚だってわかっていた。
これは、現実だ。いくら私が認めたくなくても、目の前のこれは紛れもなく本当で本物だ。
「なんで、あんたがこうなってんの」
彼の声が、頭の中で響いている。「夢蘭(ゆら)は、僕の太陽なんだ。いつも輝いてて、照らしてくれて、導いてくれるから」——そう、言っていた彼の声が。
「太陽——か」
頭(かぶり)を振って、私は笑ってみせた。現実逃避? それとも、彼に心配かけまいとしての行為? どちらも、違う。
これは——自嘲だ。
「あんたにとって、私が太陽だったみたいに」
私の中で、いつも輝いてて、照らしてくれて、導いてくれたのは——他ならぬ、あんただったよ。それはずっと、変わらないと、代えられないと、思っていたのに。
「私にとってあんたも、かけがえのない太陽だったよ」
8/6/2024, 2:43:16 PM