水晶

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12/31/2024, 1:31:25 PM

『よいお年を』

忙しい日々を過ごし、あっという間に一年が終わる。
良いことも悪いこともてんこ盛りだったが、それでも
こうして年末を無事迎えらることは嬉しいことだと思う。

リアルタイムで少し紅白を観た。
ゆず湯にいつもよりゆっくり入った。

去年は出来無かったことが今年は出来ている。
またきっと明日も変わっていく。少しずつだけれど。
そんな来年への期待を持ちつつ、今年も良い年だったと一年を締めくくりたい。

皆さまもお疲れ様でした。
どうぞ良いお年をお迎えください。

12/30/2024, 9:52:15 AM

『みかん』

地元のソウルフードと言えばみかんの餡掛け焼きそば通称『みあん』。焼きそばの塩けにみかん餡の甘酸っぱさが絶妙で子供から大人まで大人気の一品だ。
私が初めてみあんを見たのはフードコートだった。母に勧められるがままに注文したみあんだが、その見た目に私は衝撃を受けた。
焼きそばの上に何やら黄色くてベタベタした得体の知れない物がのっている。何これ…食べられるの!?
そう思った時から私はみあんを口にすることが出来無くなった。それは多分、これからも。


どうしてこうなったんだろう…。
私は目の前のみあんを見て呆然としている。
確か今日は姉が婚約者を連れて来て、家族皆で食事に出たんだけど行き付けの店がたまたま臨時休業でどうする?って話から、だったらみあんが食べたいです!って婚約者が言って…

私は静かに目をつむる。美味しい匂いが漂って来る。私はみかんも焼きそばも大好き。だから大丈夫。きっと食べられる。
私は手に汗握りながら必死に自分に暗示をかけた。




12/28/2024, 9:47:53 AM

『手ぶくろ』

「お義父さんすみません、菜緒を宜しくお願いします」
今日も息子夫婦に頼まれて、午前中だけ孫の世話にやって来た。年長の菜緒と一緒に玄関で二人を見送ると菜緒はニコニコしながら「おじいちゃん、また宝探しゲームしようよ!」と寄って来た。

相手が隠した物を見付ける宝探しゲーム。ただ『自分の私物を隠すこと』のルールがある。
よし、じゃあ最初はじいちゃんが隠すぞ〜と被ってきた帽子をソファーと壁の隙間にねじ込んだが直ぐに見付けられてしまった。ところが次に菜緒が隠した小さな手ぶくろは中々見付けられなかった。
おじいちゃん早く〜と菜緒が急かす。焦りながら家中ウロウロするがやはり無い。
何処にあるんだろう困ったな…。途方に暮れて何となく窓の外を見ると庭の赤い山茶花が目に入った。

上手いこと隠したもんだなあと菜緒に感心する。二人の目の前にあるのは山茶花の木。その山茶花の花々に紛れるように赤い手ぶくろがふたつ咲いていた。

12/25/2024, 9:38:17 AM

『イブの夜』

病院の会計を済ませ二人で玄関へ向かう。売店の脇に差し掛かった時、母が一瞬足を止めた。どうしたの?と聞くと慌ててこちらに顔を向け「何でもないよ」と歩き出した。
チラッと、売店に目をやる。
棚の下段に手作りらしき雑貨が並び、中でも赤いポーチに目に留まった。母好みの色と形、母が見ていたのはきっとこれ。

母は昔から「まだ使える」と私物を買うことがほとんど無かった。病気になってからは尚更「私は通院や入院にお金が掛かるのだから」と益々物を買わなくなっていった。
袖口や膝が擦り切れた服を見かねて、新しい物を買ってこようかと声を掛けるも母はいつもそれを頑なに拒んだ。

でも、さっきポーチ見てたじゃない…。
母は本当は我慢している。だからポーチを買って渡してもいいがきっとそれでは母の中の何かが許さない気がする。

…そうだ!

私は忘れ物をしたと言って母を車に残すと急いで売店に戻り赤いポーチを買った。
これはサンタさんからの贈り物。それだったら母も素直に受け取ってくれるのではないだろうか。

イブの夜、今夜私はサンタになる。

12/23/2024, 9:23:14 AM

『ゆずの香り』

競馬に全く興味の無い妻が、突然自分も馬券を買いたいと言い出した。急にどうしたのかと尋ねると、昨日良い夢を見たと言う。「今日の午後に有馬馬記念(ありばばきねん)があるでしょう?そのレースで白い馬が一着だったのよ」

今回16頭立ての有馬馬記念、白い馬はユズノカオリだけだ。データを見る限り15番人気でとても来そうにない。そう伝えると「ううん!ユズちゃんは絶対に来る!」いやいやそれはほぼ無いから…と妻に言いつつ、でも待てよ…?と考える。
不思議な話しだが昔から妻の言葉通りになることが度々あった。行くなの先が行き止まりだったり、買うなで待つともっと安く買えたり。だとしたら。もしかしたら。
ユズノカオリが本当に一着だったりして…。

「あ〜ユズちゃんダメだったかー!」
妻が叫んでいる。「掛金は100円だったからまあいっか。…ってあなたもダメだった顔してるわね。今日は一体いくら掛けたの?」
「ん…?1万円」嘘。本当は2万円。こっそりユズノカオリに賭けてたこと、妻には内緒にしていよう。

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