“ささの葉さ〜らさら〜”
遠くから子どもたちの歌が聞こえる
縁側に飾ってある笹が風により
さらさらと揺らいでいる
そこには色とりどりの短冊や飾りが飾られており
笹の葉を彩っていた
私は水の入った桶を沓脱石の上に置き
空を見上げた
雲ひとつない星空が広がっている
歌のように本当に砂子のようだ
天の川の両側に目的の星を見つけ
桶の位置を調節する
袖が濡れないように少し捲し上げ
桶の中にある天の川を少しかき混ぜる
こうすれば織姫と彦星の光がひとつになる
今年も無事に会えたようだ
私は縁側にうつ伏せになり
指だけくるくると廻し続けた
『七夕』より
“神頼みかい?”
僕にとって一世一代の大勝負
試験に受かるよう一生懸命お参りしている僕の横に
それは現れた
ニヤニヤ顔でこちらを見ている
僕は不審な顔でそれを見た
それの眼はどこか不思議で
思わず吸い込まれそうになり
慌てて眼を逸らした
“神様は未来がわかると思うかい?”
“もし分かったとしても、きっとそれを伝える術は”
“持ってないんだよ”
分かっている
自分でも理解している
けれども、最後にどうしても縋ってしまうのだ
大丈夫と思っても
どうしても頼まずにはいられない
そんな僕の思いを読んだかのように
それは言った
“君の願い叶うと良いね”
『神様だけが知っている』より
初めて来る場所
初めて通る道
どこを見ても
見覚えのない景色
ここはどこだろう
カーナビを見るも
目的地は目の前にあるトンネルの先を指している
なんだろう
このホラー的な状況は
私生きて帰れるよね
後ろを見ても誰もいない
私は手に汗握りながら
アクセルを踏みこんだ
『この道の先に』より
“え、うそでしょ、、、”
この日は朝から土砂降りで
予報では1日中雨だと言っていた
なのに
帰宅時会社を出ると
ギラギラと太陽が輝いていた
濡れていたはずのアスファルトも乾いており
蒸発した水分によりむわっと熱気が上がってくる
目の前を子どもたちがはしゃぎながら駆けていった
何があんなに楽しいんだろうか、、、
ついそう思ってしまう自分に嫌気がさす
子どもたちは太陽をものともせず
所々に残っている水たまりの上をジャンプしている
羨ましい、、、
今日は雨だからと思って
日傘も日焼け止めクリームも何も持ってきていない
この日差しのなか
30分も歩いて帰らないといけないなんて
考えるだけで憂鬱となる
どんどん遠ざかっていく子どもたちの声を聞きながら
私は意を決して足を踏み出した
『日差し』より
幼い頃は
大人になれば
綺麗な字が書ける
素敵な人と結婚して
子どもを産んで
幸せに暮らすことができる
大人になれば
なんでもできる
って考えてた
でも、現実は甘くないよね
綺麗な字を書きたければ
それだけ練習しないといけないし
素敵な人を見つけるには
自分磨きもしないといけない
何ひとつ苦労せずには得られない
あぁ
あの頃の無垢な時代に戻りたい
『子供の頃は』より