『願い事』
きらきら、きらきら。
あの輝く星たちを見上げて、願う事はただ、いつも同じ。
ずっとあなたと一緒にいられますように。
河岸を結んだ橋の向こうから、彼がこちらへ来るのをいつも待つ。
小走りで駆け寄って、「待たせて、ごめん。」と大きな手で優しく頭を撫でてくれる。
そんな彼が大好き。
あたしたちは織姫と彦星のように1年に1回しか会えないわけじゃないけど、橋で待ち合わせをしてると、まるで織姫と彦星のように感じてしまう。
ロマンチストではないはずなのに、小走りに駆け寄ってくれる彼の姿を見ると、幸せなのに時折切なさを感じる時がある。
ずっとあなたと一緒にいられますように。
今年も、きらきら輝く星空を見て願い事をひとつ。
『遠くへ行きたい』
毎日同じ時間に起き、食事の準備、弁当の準備、洗濯物まわして干して、仕事へ行って。
仕事が終わってからは、干してある洗濯物を取り入れ、食事の準備、片付け、お風呂、そして寝る。
毎日その繰り返しに、飽き飽きして退屈なこの頃、どこか遠くへ行きたい。
何も考えず、心と身体が休まるところへ行きたいと思うこの頃である。
『夏の匂い』
緑の木々が生い茂る音、それと共に、蒸し暑い風がムワッと頬を肌をねっとりと撫でる。
アスファルトから沸き上がる熱波がアスファルト独特の匂いを纏って、鼻に抜ける。
あぁ、夏がすぐそこまで来ている。
夏の匂いが、夏の訪れを知らせてくれている。
今年の夏も暑そうだ。
『カーテン』
ゆらゆら、ゆらゆら。
風が吹いて、教室のカーテンが揺れる。
涼しい風と揺れたカーテンの向こうから、野球部の元気で活発な声が響く。
たくさんの部員の声の中から、大好きな彼の声を拾う。
ゆらゆら、ゆらゆら。
風になびいたカーテン同士がこすれる微かな音と共に、野球部の大好きな彼の声が聞こえた。
あぁ、なんて幸せな時間。
教室の窓側の一番うしろの席に座り、目を閉じて彼の声を反芻する。
ゆらゆら、ゆらゆら。
彼の声と共に、カーテンがまた風になびいて揺れた。
『青く深く』
見渡す限りの青。
キラキラと水面に映る、太陽の光。
目の前に広がる壮大な海を眺めて、何故か懐かしい気持ちになる。
前世はもしかして、なんて浅はかな考えが浮かんで消える。
海は、どこまでも青くそれでいて深く、その色が私の心を晴れやかにするのではなく、なぜか切なくさせる。
人魚姫は愛しい彼のために泡になった。
私の今のこの想いの果ても、彼女の想いと同じなのではないかと。
キラキラと水面に映る太陽の光と、青く深く続く壮大な海の中に泡となって消えたいと思った、17歳の夏だった。