世界に一つだけ
ずっと、探し続けていたのかもしれない
時に、どうせ見つからないと
時に、どうしてと見つけたいと
そう、思いながら
それが何か、自分でもわからないまま
雲を掴むような
延々と続く砂浜の中から
一粒の砂を探すような
そんな感覚で
やっと見つけた、世界に一つだけの
僕だけの宝物
君を見た瞬間、直感があったんだ
胸の鼓動
パニックだった
うっかり見てしまった光景
君と、あいつが一緒にいて
その影が重なって
ビックリしていた
心臓がバクバクしていて
どうすればいいかわからない
とにかく、隠れてやりすごすしかない
影に隠れて息を潜める
けれど、胸の鼓動が大きすぎて
聞こえてしまうのではないかと
心配だった
君と、あいつが遠ざかっていく
ひとまず安心していいはずだけど
この胸の鼓動は
なかなか収まる気配がない
踊るように
風に乗って
くるくると回る木の葉を
何の感情もなく見ていた
今は何も考えたくなかった
人間には幸せな時と不幸せな時があって
自分は今
間違いなく不幸せな時だった
何も考えないのは逃げだろうか
この木の葉のように
風に逆らうことなく
手のひらで踊っていられたら
幸せだろうか
いいや
逆らいたい
自分の幸せは自分で決めたい
不幸せな運命を断ち切るように
踊るように回る木の葉を踏み付けた
時を告げる
ひとり、ただ待っていた
あんなに慌ただしかった廊下は
今は静かで
自分以外の人の気配はない
静かに時だけが流れるのは
不安をかきたてて
ただ、祈ることしかできない
自分がもどかしくて
もう、どのくらい時が経ったのか
何の前触れもなく扉が開いて
出てきた医師は少し疲れた表情だったが
しっかりと笑顔を見せる
ようやく、待っていた瞬間がきたのだ
貝殻
あの日、君がくれた貝殻
家族で海に行って見つけたからって
ぶっきらぼうに渡してくれた貝殻
外側はごつごつして不格好だけど
内側はキラキラした虹色で
見つめていると海の情景が見える
そっと耳に当てると
寄せては返す波の音が聴こえる
君は何でもなさそうにくれたけれど
私のために一生懸命
きれいなものを探してくれたこと
今ではわかるよ
机の中に大事にしまっている私の思い出
片付けの途中で見つけた君は
「そんなもの、まだ持ってるのか」
なんて呆れた風だったけれど
その後ろ姿はちょっとだけ嬉しそうだった
私にとって大切な宝物
だって
君から初めてもらったプレゼントなんだもの