香水
不意にただよう甘い香りに振り返る
同じ香水を使っている人がいる
ただそれだけなのに
人混みの中君を探してしまう
どこのメーカーの
どんな名前の香水なのか
最後まで聞くことができなかったのに
この香りだけは忘れることがない
突然の別れからもう三年
君の顔さえおぼろげなのに
たまに街中でこの香りに会うだけで
君のことを思い出して
胸が苦しくなるんだ
言葉はいらない、ただ・・・
側にいて欲しい
そう思った
思えば不幸な事故だった
自分がこうして今生きているのも
奇跡みたいなものだろう
駆けつけた君は
僕を見て
言葉を失って
どんな言葉をかければいいか
どんな言葉をかけたって
意味がないこと
気付いてしまったのだろう
そんな君だから
僕は君が好きなんだ
だから今はただ
側にいて欲しい
突然の君の訪問。
チャイムが鳴る
戸を開く
君がいる
意味がわからなくて
僕はフリーズする
僕と君は
お互いにそこまでの仲ではないはず
君が急に訪ねてくる理由もわからない
混乱する僕に君は
申し訳無さそうに口を開く
「どうしても
君に話を聞いてもらいたかったの」
期待してもいいのだろうか
僕が密かに君のこと想い続けているように
君も僕のこと頼りたいと思っていると
突然のことでびっくりはしたけれど
幸い僕の部屋はあんまり物がないから
散らかったりはしていない
「よかったら、どうぞ」
家の中に上がるように促す
僕も緊張しているけれど
君も緊張しているの伝わってくる
勇気を出して訪問してくれた
君の気持ちに応えたい
雨に佇む
雨に煙る景色の中、君が立っていた
すでに頭からつま先までびしょ濡れで
君がどんな表情なのか
うかがい知ることはできない
泣いているのか、怒っているのか
呆然としているのか
動くことなく、君は雨の中佇んでいた
助けてあげたい
そう思うと同時に
こんな自分に何ができる
かえって邪魔になるのでは
そう考えてしまう自分がいて
僕はただただ遠巻きに
君を見つめながら濡れていく
私の日記帳
一目惚れして買ったノートがある
デザインが可愛くて日記をつけようと思った
そうして
最初の数ページだけ書かれたノートが
私の引き出しに何冊もある
日記帳になりきれなかったノートたち
いつかちゃんとした日記をつけることが
できるのかな?
こうして私の机の上にはまた
真新しい装丁のノートが置かれることになる