木弓るん

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6/6/2023, 10:49:13 AM

最悪

悪いことというのは、重なるもので。

「うわ…最悪…」

思わず悪態をつく。
どうして、こんなところに落ちているのか。
お気に入りのリキッドファンデが
踏みつけられた衝撃で中身を床にぶちまけている。

どういうわけか
目覚ましもスマホのアラームも鳴らず
もうどう頑張ったって遅刻確定である。

まぁ…会社に着いたところで
昨日のトラブルのせいで気が重いばかりなのだが。

「もーう…」

なんだか、どうでもよくなってきた。

お風呂に勢いよくお湯を張り
溜まるまでの間で踏みつけてしまったものを片付ける。
幸いにも、半分くらいは残っているようだ。

なんだ。最悪でもないか。

お気に入りのアロマも垂らして、
ゆっくりお風呂に浸かって。
朝ごはんはいただきもののちょっといい鮭の瓶詰めを開けよう。

もうここまできたら、私は無敵だ。

何が何でも、最高だったとたと思える一日にしよう。

6/5/2023, 11:58:49 AM

誰にも言えない秘密

穏やかに。いつもの調子で。
僕は君の話を聞き、相づちを打ち、笑ってみせる。

いつもの日常。だけど。

胸が苦しい。
後ろめたい気持ちと、これが正しいと思う気持ち。
混乱して、言葉が出てこない。

「何かあった?」

不思議そうに首をかしげる君に
平静を取り繕って、なんでもないと笑う。

なんでもなくはない。

君が隣にいるのに。
なんだろう。この、孤独感は。

この秘密を、君に打ち明けてしまえば
楽になれる?

そんなことはないだろう。
聞いてしまえば、君は辛い思いをする。
きっと、どうしたらいいかわからなくなる。

だから。

自分の罪は、誰にも言えない。

6/4/2023, 12:00:51 PM

狭い部屋

目を開けると飛び込んでくるのは白い天井。

狭い部屋にあるのは自分が身を預けているベッドと
自分と繋がっているいくつかの計器。
吊るされた薬剤のパック。

安静を命じられた身体は、
拘束されている訳でもないのに
繋げられたチューブ達に縛り付けられているよう。

静寂の中、機械の音だけが規則的に響く。

世の中から切り取られたこの狭い空間。
いつまでもこんなところにいると、
悪いことばかり考えてしまう。

自分はいつ、この部屋から出られるのだろう。

6/3/2023, 12:20:06 PM

失恋

夕暮れ時の体育館裏。
転がっていったボールを取りに行って、
偶然君を見つけたんだ。

君は、落ち着きなくそわそわしていて。

そんなつもりはないけれど、
僕は思わず草陰に隠れる。

やがて、あいつがやってきて。
君は、恥ずかしそうに想いを告げた。

彼女の恋は今、始まったんだ。
そして僕の恋は今、終わったんだ…

6/2/2023, 10:27:23 AM

正直

楽しいことがあれば笑顔で。
ちょっとだけからかったら怒って。
悲しいドラマを見れば、すぐに涙をこぼす。

いつだって、君の表情は正直だ。
だから、わかってしまうんだ。

別れの言葉を口にする君が、
本意ではないことが。

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