風に乗って旅をした小鳥の物語。
最近、よく見かける人間がいる。ボーイッシュで声も少し低いから最初は男性かと思われた。でもこの子は先輩?みたいなやつと同い年くらいの男子?の前だけ嬉しそうな顔をする。面白いからコイツらを見届けようと思ったんだ。女の子は先輩の前でグイグイと押す。まさに「好き」が溢れている。そんでそれを見ているコイツは幼馴染か?見るからに嫌がっていることが分かる。女の子は幼馴染に先輩の話をしてるのか。おいおい、それはまずいだろ女の子。コイツはお前のこと好きなんだぞ?そういう目で見てんのに、他の男の話するなんてよぉ。
最近、先輩と女の子の仲がギクシャクしてるな。俺が見てない間に何があったんだ?ちょっくら先輩の家を覗きに行くか。それから俺は風に乗って先輩の家へ向かった。結構女の子の家から離れてんだな。お、ちょうどいい。先輩の部屋が見えるじゃないか。ん?何見てんだアイツ。もうちょい近くに…
「好きです。突然のことで驚い…」
俺が読めたのはここまでだ。なんて書いてあんのかわかんねぇけど、もしかしてあの女の子が渡したものなのか?ギクシャクしてるのはそれが原因か。先輩、頭抱えてんじゃねぇか。先輩も女の子のこと、気にはしていたんだな。そうか、ここでカップルが出来んのか。じゃあ、幼馴染の家にもついでに飛んでいくか。
お、いたいた。なんだなんだ?今日は元気ねぇな。
なんかもぞもぞ呟いてんのか?音が聞こえるなぁ。
「アイツ、先輩に告白したのかよ。」
よくわかんねぇけどコクハクって言葉は聞こえたな。女の子か、やっぱり。コイツも可哀想だな。まぁ、また明日来てみるか。
ちょうど良かった。部活が終わったあとか。女の子…いた!あれ、なんか元気ないなぁ。体調崩したわけでもなさそうだし…ん?
「先輩からの応え、返ってきた」
センパイって言ってるな。もう返事返ってきたのか?お、幼馴染も出てきたな。先に家で待ち伏せしとくか。
おーきたきた。ん、あ、どうしたどうした。女の子が泣いちまったじゃねぇか。
「フラれちゃった」
なんだ、ダメだったのか?わかんねぇな、人間の言葉。
「上手くいかなくて良かった」
コイツらなんの会話してんだ?よくわかんないけど、コイツらがカップルになるのか?面白いからまた今度見に来るか。
小鳥は風に乗って飛び去った。
刹那。そんな名前の推しがいたかな。んー、あとは…何があったっけ。
刹那の時も離れたくないなんて思える人が欲しい。今改めてそれを実感している。
斜め後ろの席の人から風邪をうつされて寝込んでいる私です。発熱でボーッとして何も考えられなくなって…。死にそう。そういえば昨日、私無理して部活に行って幼馴染くんに心配されてたかも。呼吸ができなくてゼェゼェしてたもんな。昨日、委員会活動があって君のことを見たのは覚えている。
「あのさ、あんた身長だけでイキってるだけであとなんもないじゃん笑」
「そうですけど。目線が下なんだよな。見下ろさないと笑」
「うっさい」
君は私のクラスの女子と仲良さそうに話していた。あ、今あの子が君のこと軽く叩いた。…え、君も…他の子にもやってんじゃん。なんだ、私だけじゃないじゃん。委員会の時間がこんなにも苦しく感じるのは初めてだ。学級長。そうだ、アイツなら私も話せる。私は君のことなんて気にしないように学級長と話した。楽しそうに話していれば、私の掲示物を貼る作業の邪魔をする。私の画びょうを奪って私の代わりに掲示物を貼る。それもあの子と仲良さそうにする姿を見せつけるように。…なんだよ、こっち来んなよ。もう、君のことなんか何も思わないんだって。先輩しか…先輩しか見えてないんだよ。私は君たちの場所から逃げ出した。風邪症状は悪化して部活では酷く咳き込んだ。ゼェゼェしててやっぱりつらい。カラダも心も。
「なぁ、ホントに大丈夫なん?」
「…ゴホッ…ハァハァ…」
君の声なんてもう聞きたくない。
「そう…いえばゴホッ君、あの子と仲良さそうだったぁハァ…ね。ハァハァ」
すると君は私に構わず仲の良い女子があと10人欲しいだのなんだの話始める。ほらな、私の事なんて全く気にしてない。いつもと違うんだ。君は私の事なんか好きじゃなかった。ただの勘違い。思わせぶりな態度で騙したのか…?私を…私を好きじゃなかったの!?もう、君は変わってしまったんだね。
目が覚めた。刹那の時も離れたくないなんてバッカみたい。
「君の夢を見るなんて…最悪じゃねぇか。アホたれ」
私には、生きる意味なんてあるのだろうか?
誰もがきっとこんなことを自分に問いかけた事があると思う。大人なんてしょっちゅうつらいこと、苦しいことがある。子どもも子どもで耐えなければいけない時や理不尽な先生に振り回される。みんな決まって自分を見失うんだ。そして自問自答を繰り返す。その中に「生きる意味」について必ず考える。生きる意味なんてそう簡単にわかるものではないし、失ってしまうことだってあるに決まってる。それを他人がどうこう言う権利はありもしない。自分自身で答えを出さないといけない。
私もまたその問いに悩む1人なのだ。生きる意味、生きる価値…誰も知りやしない。突然自分が分からなくなって自らの手で体に傷をつけてしまうことだって多々ある。本当に今生きているかどうか知りたくて、命を感じたかった。周りは離れていく。それでも、私にはその傷を優しく包んでくれる人がいたんだ。みんなには見せない弱い自分を抱きしめてずっと私の隣に居てくれた。そんな人がいたから今の私がいるのかもしれない。結局はその人も離れていく。わかっているけど、立ち上がれる力をもらえたから今はそれでいいんだ。
「生きる意味」を探している人へ
君たちが今立ち止まっているのは頑張りすぎたからなんだよ。別に頑張れとか私も周りも同じなのとか言うつもりもないし、説教するつもりでもない。ただ1つ。悩めるうちに悩めるだけ悩んどけ!考えるだけ無駄とかよく言うけど、考えれば脳のシワも増えるし自分も見つけられるし一石二鳥じゃね?いいんだ、君たちの答えを見つけなさい。私だって自分の体にたくさんの傷をつけてきた。そのやり方だって1つの答えだ。どんなやり方でもいい。君自身が満足出来たならそれでいいじゃん。誰かに何か言われたらそいつのこと殴っちまえ!それも1つの答えだ。殴るために今生きてたって。私も君たちと同じように悩んだ1人だ。私は君たちのことを尊敬するし背中を押してあげる。自分の行きたい道へ突っ走れ。大好きだから安心しな!
善悪。しっかりしてよ。思わせぶりは完全に悪の方だと思うんですが!?
「一緒に帰ろー」
私の名前を呼ぶ男子。仲のいい子である。
「いいけど、私歩きだよ?」
「仕方ねぇな。一緒に歩いて帰ってやるよ。」
「えー!?カッコイイ。ありがと〜。」
なんて会話をして帰る予定だったのに…なぜここに幼馴染くんが!?毎回不思議に思う。いつも私の隣にいること。歩いて帰るのはいいんだけど、やっぱり2人きりになるの。途中で分かれ道があるから。君はいつも私に向かってニッコニコしやがる。私のバッグを叩いたり、軽くタッチしたりたまに優しく殴ったり…全部私にしかしてないのに君は私に興味無い素振りを見せる。私の勘違い。最近本当に寂しいんだよ?君の思わせぶりにも疲れてきた頃なの。もう君のこと考えるの、やめていいかな?私、時間も余裕もなくて疲れちゃったの。それでも君は私にニッコニコしてるんだ。
ーアホたれー
「あっ!流れ星!」
「え、どこ!?」
誰かに言われて慌てて星を探した。
そんな事があってから、私は本当に暇な時、家の軽トラックの荷台に横たわってタオルをかぶりながら星を眺める。視力回復になるとも言われていた気がす…あっ!流れ星!珍しい。今日は流れ星が不思議と現れる日なのか?私が流れ星に願うことは決まってる。部活と勉強の両立ができますように。周りにはきっとそんなことを言っているだろう。でも、本当は私の願いは…先輩にもう一度会ってちゃんと告白して、先輩と…お付き合いできますように。
先輩は全国大会での記録と写真。それだけしか残してはいかなかった。学校に来たって先輩のモノは残っている訳が無い。何も無いんだもの。それだからなのかカラダが先輩を欲して欲してたまらない。陸上部の男子だって同じ種目の子だって誰一人として先輩の代わりにならない。彼氏でも出来たら何も考えないですむのに…先輩じゃなきゃダメみたいなんですよ。
涼し気な夜。今日もまた流れ星を探しては必死に願いを唱えていた。