茶園

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12/7/2022, 10:39:53 AM

短い小説 『部屋の片隅で』

 部屋の片隅で、慶太はごそごそしていた。
何をしているのかきいても、何も答えてはくれなかった。
 変なのと思い、私はその場を去った。

 瑠香が来た時も慶太はごそごそしていた。瑠香は気になり、何をしているのかきいた。
 すると慶太は瑠香の耳元に顔を寄せ、小声で言った。
 「○○さん(私)にプレゼントしようと思ってるんです」


 慶太が私のサンタになってくれていたと分かったのはクリスマスの次の日だった。

12/5/2022, 11:28:23 AM

短い小説 『眠れないほど』

 真夜中私は寝室に一人でレポートを書いている。
今日は変なミスで時間を取られ、仕事は業務時間内に終わらず、残りを家で仕上げる羽目になった。
 家でならストレスなくできると思ったが、眠気が強くなってきている。眠気との戦いもまた、ストレスだ。
 傍らに栄養ドリンク。飲んでも大して変わらず。私は頭を抱えた。

 部屋の外を誰かが通った。光越だ。光越はハミングをしていて、何だか上機嫌だ。
 何をしているのかきくと、光越は陽気な感じで「絶品果実を食べたんだ」と答えた。
 “絶品果実”?私は思わず言葉を繰り返した。
 光越は「冷蔵庫に入ってるからお前も食べろよ。眠気吹っ飛ぶぞ」と言い、笑いながら去っていった。
 “眠気吹っ飛ぶ”それは今正に私が求めていたものだ。

 興味本意で冷蔵庫を開けた。丸く赤い果実。だが今まで見た果実とは違う。これは一体何だろうか。
 口に入れたら、苦い。と思ったその直後に突然刺激が口の中で飛び出し、全身を伝った。その刺激は何とも言えない快感であり、仕事の疲れなど微塵もなくなった。
 すっかりハイになり、仕事に取りかかった。不思議なことに数分で終わった。
 あの果実は凄い効果である。どんな眠気でも眠れないほど集中力が高まる。今度光越に会ったら何の果実かきいてみよう。

12/3/2022, 8:49:46 AM

光と闇の狭間を生きる

・光と闇は、まるで山と谷だ。
 人生山あり谷ありという諺は人生の特徴を表している。山に登れば光が当たるし、山を下れば光は山の影に消され闇となる。
 それを行き来しながら進む我々は、人生の勾配に左右されて生きなければならない。
 だが、神経質にならなくても、下り坂はいつか平坦な道になり、やがて上り坂となり再び光が当たる。終わりのない闇はない。

・輝いている人の裏に苦労してる人がいると聞くが、これも光と闇、山と谷を表しているように感じる。高い山ばかりが太陽の光で輝き、低い山や谷はその山に遮られ光を浴びられずにいる。
 だが、その高い山も、かつて低い山だったりするものだ。地殻変動やらで何とか高くなったのだ。その上に居る者も、登るまでは苦労していた筈だ。自分の力で登りきって、太陽の下で輝いているのだ。

 光は、全ての地面に平等に広がっている。山も谷も、人生の良し悪しも、常に上下する。その狭間に生きている我々はある意味平等に生きているかもしれない。

12/1/2022, 7:07:45 PM

距離の脅威

・距離は時々人を騙す。
 分かりやすい例えは目的地までの距離だ。駅から5分なんてすぐ着くと思ったら実際15分とかザラにある。
・あと、距離は人の気持ちで左右する。移動が楽しければ短く感じるし、辛ければ長く感じる。その気持ちが強ければ強いほどその傾向が見られる。
 その時には駅から5分でさえ、1時間かかることだってあり得る。大袈裟かもしれないが、私は経験したことがあるのだ。
 さらに道に迷ってしまえば、解決するまでずっと辿り着かないだろう。
・距離を短くしたいのならば、移動を楽しく感じることが有効だと思う。そして、事前にその土地のことをよく知る。そうすることでその土地との心理的な距離は近づき、目的地までの距離も短く感じれることだろう。

11/29/2022, 11:49:12 AM

短い小説 『冬の始まり』

 いよいよ朝が本格的に寒くなってきた。ストーブを手放せなくなった私。もう情けないだのだらしないだの言われても構わない。私はとにかく温まりたいのだ。
 とは言え、いつまでも寝てたらお腹が空く。寝ても食べ物はやって来ない。仕方なく自分から取りに行くことにした。
 …と思ったら棚にも冷蔵庫にも食べ物がない!なぜ買っとかなかったのか。冬眠の準備を忘れた熊のような気分だ。のんびりな日は急に修行の日に変わった。

 ぶるぶると震えながら外に出た。吐息が白いことに気づく。鼻と口を手で覆うと、鼻が冷たく、吐息が温かかった。

 はあ、もう暖かくなることはないんだな…。

 本格的な冬の始まりを目の当たりにした私は、落ち葉だらけの道をスニーカーで踏み歩く。
 コンビニで肉まん買って食べて、温まってからスーパーで食べ物集めよう。そう考え、コンビニへの短く長い道のりを歩くのだった。

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