短い小説 『太陽の下で』
記録的な炎天下。強い朝の日差しに照らされ、私は起き上がった。窓を開けると、大きな太陽が空に上がっていた。記録的に大きい太陽。これは新しい天体ショーか何かか。
外に出たらあっという間に日焼けしそう。でも、こんな滅多にない日に出かけないなんて、なんだか勿体無い。私は日焼け止めを満遍なく塗り、日傘を持ち、思いっきり外に出た。
走っている姿を、まるで太陽が追いかけているかのようだ。遠くから見れば、きっと太陽の中にすっぽりと私のシルエットが収まっていることだろう。それにしても暑い。当たり前だが。
途中で丘を見つけた。太陽をもっと間近で見れると思い、登ってみた。
大した変化はないが、只、下は崖でその先に広がる森林が煌びやかに輝いていた。
「どいて」
突然、後ろから声が聞こえてきた。振り返ると若い女の人がこちらに近づいてきた。私は即座に丘を下りると、女の人は丘を登り、太陽を見上げた。
女の人は、両手を上げ、組み、地面に片膝付けて祈りだした。
何を祈ってるか訊くと、女の人はこちらを見ずに答えた。
「この太陽、年なのよ」
星は年を取ると膨張する。聞いたことある話だがこんなに一日で老けるのか?
「これは何かおかしいとあたしも思う。でも、原因は何となく、分かる。多分、あたしたちが宇宙に行けるようになってから、色々なことをしてきたと思うの。太陽も、たくさんいじったからじゃないかしら」
だが、私は逆のことを考えた。今まで太陽が寿命が近いのを隠して、アンチエイジングさせてたのではないかと。そしてその限界が来たのではないかと。
すると女の人は下を向いているようだった。本当は分かっていたのではないのか?
私は女の人の横に立ち、自分も涙を拭い、一緒に太陽の下で祈った。
↓↓落ちていく↓↓
↓上から何かが落ちていく↓
↓スピードが落ちていく↓
↓運気が落ちていく↓
↓能力が落ちていく↓
↓体力が落ちていく↓
↓気力が落ちていく↓
↓意識が落ちていく↓
“落ちていく”って普通に考えれば悪いことって考えてしまうけれど、
でも、一度ひっくり返してご覧。
↑意識が上がってくる↑
↑気力が上がってくる↑
↑体力が上がってくる↑
↑能力が上がってくる↑
↑運気が上がってくる↑
↑スピードが上がってくる↑
↑下の底から復活するかのように上がってくる↑
考え方次第で良い方に転がってくるかもしれない。
只、今は物価だけは落ちていって欲しいものだ。
短い小説 『どうすればいいの?』
昼下がり、お茶会では都会の夜と田舎の夜どちらが怖いかという話で盛り上がっていた。
仲間のほとんどは田舎の夜の方が怖いと言っていた。田舎は真っ暗だし人がいないし、獣が人里に下りてウロウロすることもあるそうだ。
中には都会の夜の方が怖いと言う人もいた。都会は人がたくさんいる分変な人や不審者が多いからだと。
だが私は思う。人がたくさんいる分まともな人も多いので安全なんじゃないのかと。
田舎の夜の方が断然怖い。私はそう思うのだった。
夜中目が覚めると、自分は都会の知らない街にいた。どうやら飲み過ぎで酔っぱらっていたようだ。
だが、見た感じ駅に近そうなので帰れそう。帰れなかったとしても、ホテルかネカフェで一泊すれば大丈夫。
マップアプリを開き、近くの泊まれる所を探していると、前方から影が近づいてきた。
顔を上げると、昔の職場の苦手な上司がいた。私は顔が青ざめ、一目散に逃げた。
姿が見えなくなったのを確認すると、心の底から安心した。おかげで目は完全に冴えてしまった。だがこんな目覚ましはもう勘弁だ。
アプリで近いネカフェを見つけ、そこへ向かおうとすると、途中の角で昔の職場の苦手な先輩とバッタリ遭った。私は疲れた体に鞭を打ち、逃げた。
と思ったら逃げた先に別の苦手な先輩が。急ブレーキを掛け回れ右をするとその鼻先に苦手な同僚が。この先輩と同僚は二人で私を取り囲もうとする。
絶体絶命!どうすればいいんだ!
目が覚めた。自分は自宅の寝室にいた。
…夢だったらしい。夢で良かった。
夢での出来事ながら、都会の夜も侮れないものだと痛感した。
《削除済み》
キャンドルの灯り
・あの時のことを思い出す。災害で停電になった時のことを。
数時間で元に戻ったが、初めての私にはドキドキワクワクしかなかった。こんな感情になる人は多分いないだろう。
暗闇の中、学生時代に作ったラジオを引っ張り出し、スーパーの弁当を開けて食べた時のことも覚えてる。あの味はいつもと違う味に感じた。新鮮な体験で本格的な災害ごっこだとか変なことを言ったものだ。
・こんな時こそ、キャンドルがあればより雰囲気が出て楽しめただろうに。そうでなくとも、キャンドルの火は電気に全く頼らないでいるから、災害時にあればかなり有り難い。
電気で点くキャンドルの明かりを眺めた。やはり癒される。だが、本物のキャンドルの灯りは、この明るさに加えて、火の暖かさがある。その小さくも
しっかりと燃え上がる火は、より心の芯まで暖め癒してくれるに違いない。