茶園

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短い小説 『どうすればいいの?』

 昼下がり、お茶会では都会の夜と田舎の夜どちらが怖いかという話で盛り上がっていた。
 仲間のほとんどは田舎の夜の方が怖いと言っていた。田舎は真っ暗だし人がいないし、獣が人里に下りてウロウロすることもあるそうだ。
 中には都会の夜の方が怖いと言う人もいた。都会は人がたくさんいる分変な人や不審者が多いからだと。
 だが私は思う。人がたくさんいる分まともな人も多いので安全なんじゃないのかと。
 田舎の夜の方が断然怖い。私はそう思うのだった。


 夜中目が覚めると、自分は都会の知らない街にいた。どうやら飲み過ぎで酔っぱらっていたようだ。
 だが、見た感じ駅に近そうなので帰れそう。帰れなかったとしても、ホテルかネカフェで一泊すれば大丈夫。
 マップアプリを開き、近くの泊まれる所を探していると、前方から影が近づいてきた。
 顔を上げると、昔の職場の苦手な上司がいた。私は顔が青ざめ、一目散に逃げた。
 姿が見えなくなったのを確認すると、心の底から安心した。おかげで目は完全に冴えてしまった。だがこんな目覚ましはもう勘弁だ。
 アプリで近いネカフェを見つけ、そこへ向かおうとすると、途中の角で昔の職場の苦手な先輩とバッタリ遭った。私は疲れた体に鞭を打ち、逃げた。
 と思ったら逃げた先に別の苦手な先輩が。急ブレーキを掛け回れ右をするとその鼻先に苦手な同僚が。この先輩と同僚は二人で私を取り囲もうとする。
 絶体絶命!どうすればいいんだ!

 目が覚めた。自分は自宅の寝室にいた。
 …夢だったらしい。夢で良かった。
 夢での出来事ながら、都会の夜も侮れないものだと痛感した。

11/22/2022, 9:34:51 AM