綺麗事に力なんて無い。
その大半は言い訳さ。
でも、地球は丸いからね。
後ろに逃げ続ければ、その内ぐるりと回って、
元の場所に戻ってきてしまう。
何を言いたいかというと、
つまりそういうこと。
踏み潰された蝶の死骸に、蟻が群がっている。
道端に咲いていた花は、気付けば枯れていた。
車が、人が、知らない顔で過ぎてゆく。
信号は三色を繰り返し点灯させ、
太陽と月は、かわりばんこに空を塗り潰す。
皆、無関心に生きて、中途半端に交わって、
そんな風にして今日も正しく地球は廻っている。
未来までの記憶を辿った途中の今
もう答えは出ているんでしょう
どうせ聞かないくせに 誰かに聞いてみる
澄ました態度で 一体 誰に向けて何を騙しているの
「何でもいい」という言葉
愛読書みたいに何度も使って
そうすれば選ばずに済むから
自分を守りたかったのかも
鏡の奥 見つめ返す 卑怯者
選ばされたみたいな顔して
実は全部選んでいた事
あの日、僕の世界には、決して明けぬ夜が訪れた。
僕を中心とした、深く、暗い、闇い夜だ。
気が付けば何時だって、
姿と声と匂いと温度を思い出して、
瞼の向こう側と間違い探しをしている。
何百、何千、或いはそれ以上の出会いを以てしても、
たった一人分の穴が、こうも寂しいものだとは。
彼が太陽だとすれば、僕は月だっただろう。
そう、“俺達”は彼岸花に似ている。
警鐘が鳴る。
眼を閉じれば、
暗闇の中の篝火みたいに、あの日の事が浮かぶ。
その風景を眺めている内に、
ドス黒い炎が本当に私の中で燃え上がるのを感じ、
その度に慌てて眼を開けて鎮火させる。
何度か繰り返す内に、眠るのが少し怖くなった。
警鐘が鳴る。
街の中にある、ありふれた雑音が、
あの時、耳にした不協和音と重なる。
例えば、雨の音。
例えば、雑踏。
遂には、誰かの声すらも。
耳を塞げば、それはより鮮明に聴こえて仕様がない。
思考は迷路の中。
いや、解っている。
眼を逸らしているだけで。
ただそれは………。
警鐘が鳴る。
虚しく、急かすように、警鐘は鳴り続けている。