komaikaya

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12/31/2025, 1:52:04 AM

お題:『星に包まれて』&『静かな終わり』

☆☆☆

「星に包まれてる、なんて表現したくなるような星空、いつか見てみたいなぁ」

 ……と、彼女が言ったから。
 俺は、家庭用プラネタリウムの、ちょっといいヤツを買ったのだ。

 しかしどうやら、それがきっかけで──俺と彼女の関係は、まるで付き合ってたのが夢だったかのような、静かな終わりを迎えることになった。

「うわー。『これからもいい友達でいたい』、その返事にお前、『了解』って、それだけ……?」

 俺のスマホでメッセージアプリの履歴を見た工藤が、口を押さえながら、肩を震わせた。

「……笑う場面か?」
「悪い、でもお前らしいなぁ、って。それで、元カノちゃんの旅行ブログってのは……ああ、ほんとだ。さすがウユニ塩湖、360°の星空ね、すっげー綺麗じゃん! うん、まぁ……アウトドアとインドア、つまりは方向性の違い? でも元カノちゃんからしたら、このプラネタリウム……チガウ・ソウジャナイ感、凄かったろうなぁ……クッ、フフッ」

 笑いをこらえるつもりのない工藤から、スマホを取り返し、俺はため息をつく。しょうがない、目的のためにはちゃんと、事情は説明しておきたい。

「まぁ……だから。この家庭用プラネタリウムはそういう"イワクツキ"ってこと、それでもいいなら、もらってくれると助かる」

 部屋を暗くして、プラネタリウムのスイッチを入れ。
 あの日の彼女も、微妙ながらも一応は喜んでくれた星空を、工藤に見せてやる。

 俺たちはベッドに背を預けて並んで座り、しばらく無言でその光景を眺めた。

「……お前さぁ。俺のこと部屋に上げちゃうくらい、弱ってんだ」

 俺が返事をしなかったのをいいことに、暗闇の中で工藤が、距離を詰めてきた。

「こうやって慰めてやれば、コロリと……って! お前がそんなチョロいわけないよなー!」

 工藤に髪をグシャグシャにされながら頭を撫でられ、「さぁ、俺の胸で泣いてもいいぞ」「バーカ、誰が泣くか」などど軽口を叩き合いながら、ふと思う。

 工藤は常日頃から『お前って軽〜く俺の守備範囲なんだよね〜』などと俺に言い、俺はそれを適当に無視したり流したりして、奴も『まぁそうだよね』などと返す、それがいつもの俺らの関係で、けれど。

「飲もうぜー」
「おう」
「失恋に……あっ、青春にかんぱ〜い!」
「うるっせぇよ」

 こんだけ距離を詰められても、頭を撫でられても、べつに気持ち悪さもなく──チガウ・ソウジャナイって感覚が、湧かないんだが……俺が弱ってるから、か?
 いや……この件はとりあえず、棚上げにしておこう。

「ちなみに、工藤ってアウトドア、インドア、どっち?」
「ガッチガチのインドア〜」

 どうやら方向性? とやらは、合ってるようだ。

12/28/2025, 4:57:34 AM

 はーい! こちら魔王城前でーす。
 さあ、今年もやってまいりました、絶望フェス! 今回はどんな絶望が味わえるんでしょうかー?

 普段は魔物の豊かな底無しの湖に囲まれている魔王城。
 年末のこの時期に限って、湖がすっかり凍ってしまうのですがー。
 その凍った湖の上に、大小の氷壁がせり上がってこのように、天然の巨大迷路を作り上げているんですね〜。

 通称『凍てつく鏡』と呼ばれるこの迷路、ここを抜けないと魔王城にたどり着けない、というわけなんですが……ご覧いただけますでしょうか。

 今年も、人間族の勇者さんたちが、続々と集まってます!

 今年こそは魔王様を倒さん! と、集結した勇者さんたち。もはや年末の風物詩ともいえる光景ですね〜。

 魔王様に相対するには、まず、この『凍てつく鏡』を突破しないといけません、が……さてさて。

 魔王城の門前を任されちゃってます我々、夢魔一族のトラップを抜けることが出来る勇者さんが、今年こそは現れるのか、どうか……。

 あっ、さっそく『凍てつく鏡』のトラップ、その名も悪夢回廊にー、まんまと囚われちゃった勇者さんがいますよ〜!

 『凍てつく鏡』──ピッカピカに磨かれた鏡のような氷壁に映し出されるのは、自らの醜い真の姿や犯してきた過去の過ちなどなど、思わず迷わず絶望したくなっちゃうコンテンツが盛りだくさん! ですからねっ!

 それでですね、ウフフッ。ワタクシ、レポーター特権で、出来たてホヤホヤの絶望を味見しちゃうんですが……それでは、いただきま〜す!

 ……んっ、むむ、ふぅん……ゴクリ、はい。
 えー、とーーっても濃厚で、えっと、もうひと口……うん、やっぱり勇者さん由来の絶望は、ひと味違いますね〜、後味も深くて……美味しいですっ!

 さあ、この絶望フェス、『凍てつく鏡』にチャレンジする勇者さんがいなくなるまで、絶賛開催中です!

 最上級の絶望をお得に、お手軽に味わいたい夢魔のみなさーん!
 ぜひ一度、足をお運びになってみてはいかがでしょーかー?

 

12/27/2025, 1:24:34 AM

『雪明かりの夜』

寒月の光が踊る
雪明かりの夜に

雪上を一匹で
疾駆するのは
雪色のウサギ

明るい夜だ
明るい夜だ

誰もいない雪原を
飛ぶように渡って

付けた足跡になど
かまわず一目散に

行く手を阻まれず
何者にも追われず

一面の白の中に在る
真っ白なただ一匹は

幸福だとか
不幸だとか

そういう思い煩いから
遥か遠くへ駆けるのだ

12/26/2025, 9:29:22 AM

じゃあ言われた通り
『祈りを捧げて』みようか

けれど
方法を知らない
祈るのと願うのは
どう違うの?

利他を偽善だと訝るお前には
永遠にわからない

祈りとは
ただ thank you って
口にするだけ

それだけなんだってことを
たぶんきっと
信じてはもらえないから

12/22/2025, 9:13:39 AM

 際限なく『降り積もる想い』と溢れる愛おしさ、これらはセットになっていて、その愛おしさを想いを持つ同士、お互いに与え合うことが、この感情の着地点。

 なら、そういう"降り積もって溢れさせる"という流れを作れない、相手に受け取ってもらえない場合は──でも、溢れさせることの出来ない想いを必死に堰き止め、積もるものも掻いては脇へ捨て溶かそうとしたって無理で、そうこうしているうちに私は、降り積もるものは根雪へ、それでも溢れ出るものは、誰の目にも留まることのない気体へと変える術を身につけた。

 私はこの片思いをこうして、熟練の技とも言える技術でもって長年続けてきたわけで、だから──。

「じゃあ。根雪から溶かせばいいってことで、なら、」
「やっ、だめ、お願いだから、ゆっくり……じゃないと決壊しちゃう、なんかおかしくなっちゃうから、」
「だーいじょうぶ。むしろ、しっかり決壊してもらわないと、こっちで受け取れないだろが」

 あーあ。『♪雪がとけて川となって、山をくだり〜谷を走るぅ』なんてBGMを空耳するくらいには私、おかしくなってる……。
 っていうか、なんで根雪のことなんかペラペラ話しちゃってるの? ちょこっとアルコール入れたからって、私チョロ過ぎだし、あーもう、すでにいろいろと、ドロッドロに溶けまくってて……。

「うう……両思い、コワイ……」
「え? それ、饅頭コワイってヤツ? ふーん、それならこうして、」
「ちょ……っ、待って待って、待ってー!」


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