お題:『星に包まれて』&『静かな終わり』
☆☆☆
「星に包まれてる、なんて表現したくなるような星空、いつか見てみたいなぁ」
……と、彼女が言ったから。
俺は、家庭用プラネタリウムの、ちょっといいヤツを買ったのだ。
しかしどうやら、それがきっかけで──俺と彼女の関係は、まるで付き合ってたのが夢だったかのような、静かな終わりを迎えることになった。
「うわー。『これからもいい友達でいたい』、その返事にお前、『了解』って、それだけ……?」
俺のスマホでメッセージアプリの履歴を見た工藤が、口を押さえながら、肩を震わせた。
「……笑う場面か?」
「悪い、でもお前らしいなぁ、って。それで、元カノちゃんの旅行ブログってのは……ああ、ほんとだ。さすがウユニ塩湖、360°の星空ね、すっげー綺麗じゃん! うん、まぁ……アウトドアとインドア、つまりは方向性の違い? でも元カノちゃんからしたら、このプラネタリウム……チガウ・ソウジャナイ感、凄かったろうなぁ……クッ、フフッ」
笑いをこらえるつもりのない工藤から、スマホを取り返し、俺はため息をつく。しょうがない、目的のためにはちゃんと、事情は説明しておきたい。
「まぁ……だから。この家庭用プラネタリウムはそういう"イワクツキ"ってこと、それでもいいなら、もらってくれると助かる」
部屋を暗くして、プラネタリウムのスイッチを入れ。
あの日の彼女も、微妙ながらも一応は喜んでくれた星空を、工藤に見せてやる。
俺たちはベッドに背を預けて並んで座り、しばらく無言でその光景を眺めた。
「……お前さぁ。俺のこと部屋に上げちゃうくらい、弱ってんだ」
俺が返事をしなかったのをいいことに、暗闇の中で工藤が、距離を詰めてきた。
「こうやって慰めてやれば、コロリと……って! お前がそんなチョロいわけないよなー!」
工藤に髪をグシャグシャにされながら頭を撫でられ、「さぁ、俺の胸で泣いてもいいぞ」「バーカ、誰が泣くか」などど軽口を叩き合いながら、ふと思う。
工藤は常日頃から『お前って軽〜く俺の守備範囲なんだよね〜』などと俺に言い、俺はそれを適当に無視したり流したりして、奴も『まぁそうだよね』などと返す、それがいつもの俺らの関係で、けれど。
「飲もうぜー」
「おう」
「失恋に……あっ、青春にかんぱ〜い!」
「うるっせぇよ」
こんだけ距離を詰められても、頭を撫でられても、べつに気持ち悪さもなく──チガウ・ソウジャナイって感覚が、湧かないんだが……俺が弱ってるから、か?
いや……この件はとりあえず、棚上げにしておこう。
「ちなみに、工藤ってアウトドア、インドア、どっち?」
「ガッチガチのインドア〜」
どうやら方向性? とやらは、合ってるようだ。
12/31/2025, 1:52:04 AM