代理(特に何も無い学生)

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8/8/2024, 10:02:53 AM

「そう、ですか…」
私はその時に思い出した。
あまり女の人が男の一人暮らしの家にドカドカと入らないほうが良いってこと。
何されるか分からないから、両親には深い関係以外、気を付けろと言われている。
「榊さん。」
私がボーッと考え事をしていると、隣人さんは私の目の前にお茶を用意してくれていて、私と対面するように座っていた。
「鳥井さん…」
そして、テーブルの真ん中にあの白い箱が置かれていた。
「これ、俺からのプレゼントです。」
「えっ…」
怯える私と裏腹に、隣人さんは不気味な表情で微笑んでいる。
私は怖くて、逃げたくても逃げられなくて、喋ろうにも喋れない。
動こうにも動けない。
そんな私を見た隣人さんは私の直ぐ横に来て、私の手を取り、手のひらにプレゼントと言っていた白い箱を持たされた。
「怯えなくて良いんですよ。」
その瞬間に私の防衛本能が働いたのか、身体が勝手に隣人さんの家から出ていった。
白い箱を持たずに。

8/7/2024, 10:03:09 AM

「お、お邪魔します。」
「全然上がってください。」
意外と男の人の家って感じではなくて、凄い綺麗に整えられていた。
ていうか、私より綺麗かも……
私はどうすれば良いか分からなくて、玄関で立ち止まっていると、隣人さんは私にそう声をかけてくれた。
「お茶出しますよ。適当に座っててください。何してても構いません。」
私は取り敢えずテーブルの直ぐ側の所に座ることにした。
「不思議な家ですね。カレンダーも時計も置いてない…、携帯で確認出来るからですか?」
私が隣人さんにそう言うと、隣人さんはお茶を作る手を止めた。
「…現実を見たくないっていう部分もあるからですね、現実逃避。」
隣人さんはお茶を作る時に絶対に使わないであろう、「包丁」を持って、私にそう言った。

8/6/2024, 1:02:01 PM

「無理しなくて良いんですよ。」
私はこの現実の絶望を現実逃避するために煙草に手を出してしまった。
其処であの隣人さんに吸っている所を見られて、何があったのか話してみると、そう言われた。
「私、結構不幸体質なところもあって、昔から彼氏とか作りたく、…無いんだよね。その人も不幸になってしまうのが怖くてさ。」
私がそう言うと、話を聞いていた隣人さんは煙草を吸っている手を止めた。
「だから、今回の遠距離中の彼氏も…亡くなってしまったんです…」
私はあの脱線事故の事を思い出して、思わず涙目になる。
普通に声が出ない、どうしても震えてしまう。
私は火を消していない煙草を手で握りつぶすように持った。
ジュッ、と手が火傷していることにも気付かなかった。
「…家、来ます?此処で話してたら、誰かと会うかもしれないし。」
「え、良いんですか…」
珍しく隣人さんが私にそう言ってくれた。
一人暮らしの男の人の家は危ないという言葉は私の中に今は無かった。

8/5/2024, 2:09:07 PM

次の日に一本の電話で私は起きた。
朝頃だった。
寝ぼけていた頭も、あの彼氏のお母さんの一言で冷めてしまった。
「電車の脱線事故で彼氏が亡くなってしまった。」との事を聞いてしまってからね。
「脱線事故…!?!?」
「そうなの、あの子が最後に会っていたのが雪奈ちゃんなの。私達知っていたから、出来るだけ早く伝えないとって思ってね…。」
私は思わず、その場に膝から崩れ落ちてしまった。
「…ごめんなさい…、私がもっと注意を払っていれば…こんな事にはならなかったのかも知れないのに……。」
後日、彼氏の両親に会った時に私は謝り続けた。
「そんなに謝らないで、雪奈ちゃん。貴方だけの責任じゃ無いわ。私達にも責任はあるの。」
「だから、ほら、顔を上げなさい。大丈夫。そんなに自分を責めないでくれ。」
彼氏の両親の温かさが唯一の、私の救いだった。
だけど私はその日から、私は生きているという心地がしなかった。
これは夢なんじゃないかって、毎日のように思い込んでいた。
きっと、また彼氏からメールが届くだろう、電話もきっと出てくれるだろうとずっと信じていた。

8/4/2024, 10:54:50 AM


「久しぶり。元気してた?」
「お久しぶりだね!元気してたよ!」
相変わらずの顔で良かったと、私は安堵しつつ、一人暮らしの家に招待した。
何気に彼氏は私の一人暮らしの家に入るのは初めてだ。
何故かわからないけど、彼氏は私の部屋に入る前にずーっとドキドキした表情になっていた。
「そんなに?」
「いや、彼女の一人暮らしの部屋に入るなんて…ドキドキするだろ…!!」
そして、彼氏と私は楽しい一日を過ごしていた。
ゲームしたり、お互い料理を作り合ったり、映画を見たり、沢山の楽しい時間を過ごした。
だけど、そんな楽しい時間は早く終わってしまう。
私は彼氏を駅まで送るために、彼氏に着いていくことにした。
「此処までで良いよ。帰り、気を付けるんだよ?危ないし、可愛い女の子なんだから。」
「はいはい、可愛い女の子が見送ってあげてるんだから、気を付けて帰るんだよ。」
その会話が彼氏との最後の会話になるとは、私は思ってもなかった。

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