代理(特に何も無い学生)

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8/3/2024, 10:59:11 AM

「出来るだけ気にしないように。」
その言葉がゴチャゴチャになってしまった私を護衛する言葉となっていた。
それからと言うもの、隣人さんとは上手く関係を築く事が出来ていった。
「おはようございます。」
「…おはようございます。鳥井さん。そう言えば、掃除の回覧板が田中さんで止まっているって聞いたんですけど…」
「あぁ、それはちゃんと俺のところに回ってきて、今は山田さんのところまで行ってるので大丈夫ですよ。」
今では挨拶だけでなく、軽い雑談や世間話までする。
帰りとかは会う機会は全く無いけど、朝とか休日とかはよく会うようになった。
そして、今日は彼氏を家に呼ぶことになった。
遠距離中の彼氏だったから、私はウキウキ気分でいた。
「…ん、榊さん何だか嬉しそうですね。何かあるんですか?」
ごみ収集の日だったから、私がゴミ捨て場に居ると、後から隣人さんが来た。
その時に私の表情を見た隣人さんに察されてしまった。
「よく気が付きましたね…!そうなんです、今日は遠距離中だった彼氏が家に来るんです。つい、楽しみになってしまって…」
私が隣人さんにそう言うと、隣人さんは優しく微笑んでくれた。
「そうなんですか、それは羨ましいです。楽しんできてくださいね。」
「ありがとうございます…!」
私は彼氏と会う前にそう言われたことで、より一層、気分が良くなった。

8/2/2024, 10:24:22 AM

続き※長い

「俺の両親、俺が物心を付いた時ぐらいに心中したんですよ。施設にそのまま預けられて、義理親に行ったんですけど。」
隣人さんは少しだけ悲しい目をしながらも、私にゆっくりと話してくれた。
「何で俺だけを生かしたのかは、わからないんですけどね。」
隣人さんはそう言って、肩の重荷を下ろしたかのように、地面に座り込んだ。
私も同じように地面に座り込んだ。
「義理親、どっちも問題なんですよ。母親は宗教にハマってたし、父親は金遣いが荒かったし。…救いようが無かったんです。不思議ですよね。そんな人達が子供を家に引き取るなんて。」
其処から隣人さんは淡々とした口調で話を続けた。
「俺が一人暮らしをするっていうのに、何故かあの義理親は着いてきたんですよね。もちろん、家賃代とかは二人が払ってました。」
気がついた時には、私は何も考えず、ただ単に隣人さんの話を聞いてしまっていた。
「これ、あの義理親から貰いました。」
隣人さんはそう言って、煙草を持っていない方の手に白い箱を持った。
「箱…?」
私がそう言うと、隣人さんの口元が少しだけ緩くなり、口角を上げた。
「俺が渡されたのが幼少期の時だったんですけど、何だか気味悪くて、開けてないんですよね。」
そのまま隣人さんの話し車に乗せられて、ずっと私は聞いてしまっていた。
そんな時に、話が終わった隣人さんは最後に、私にこう言った。
「俺も、いつか貴方に何かを渡してみたいです。この、義理の両親が俺にくれた"白い箱のように。"」
隣人さんはそう微笑んで、「ではまた何処かで。」と私に言い残し、颯爽と部屋に戻っていった。
私は隣人さんが言っていたあの言葉が、頭の中に変に残ってしまった。
何か意図があるのか、それとも単なる事なのか、頭がゴチャゴチャになってしまった。

8/1/2024, 11:20:01 AM

続き

「…お疲れ様です。」
警察の人との話が終わった時に、私の部屋がある上の号室の階段の直ぐ横で隣人さんが、一人で煙草を吸っていた。
「お疲れ様です…、結構話長かったですね。疲れちゃいました…ははっ、」
私は、煙草を吸っている隣人さんに、そう冗談交じりな事を言った。
私がそう言った時に、隣人さんが煙草を吸うのを一旦止めて私にこう言った。
「…ふぅ…、榊さんだから言えます、亡くなったあの方って俺の義理の両親なんですよね。」
隣人さんは煙草を吸っていた煙を吐いて、私にそう言った。
私は冗談交じりな事を言ってしまったことを深く後悔してしまった。
「まぁでも、俺はあの義理両親の事、好きじゃないんですけどね。」
隣人さんは咥えていた煙草を持って、私の顔を見つめながらそう言う。
話をしていた隣人さんは少しだけ、口角を緩めていたような気がした。
「どうして、好きじゃないんですか?」
私は思わず聞いてしまった。
あまり、こういうのは深掘りはしちゃいけない事は知っている。
けど、隣人さんはきっと勇気を持って私にそう言ってくれた。
私ぐらい、隣人さんの少しぐらいの相談相手のようになっても良いんじゃないかと思ってしまったんだ。

7/31/2024, 10:13:42 AM

昨日の続き

私も回覧板を家に置いて、大学に向かった。
その数週間後、私が住んでいるアパートに警察やパトカーが沢山集まった日があった。
昼間頃まで私は寝ていて、ザワザワとした人の声や音で起きてしまった。
半分寝ぼけながらも私が下に降りると、あの隣人さんも居た。
「あ、榊さん。また会いましたね。」
ある意味、隣人さんが私のことを見つけてくれたとも言える。
「こんにちは、えっと、鳥井さん。この警察官の人達はどうしたんですか?」
隣人さんが知っているとは限らないのに、私は思わず聞いてしまった。
聞かれた隣人さんは私の顔は見ず、警察官の人達の方を見ながら私にこう言った。
「105号室の奥さんが、旦那さんと心中したらしいですよ。理由はよくわかっていないんですけどね。」
多分だけど、私よりもっと先に隣人さんは此処に居たのだろう、説明が詳しかった。
そんな訳で、私も警察官の人に話を色々と聞かれた。
結構長くて、途中から流してしまったり、疲れを感じたりもしちゃったんだけどね。

7/30/2024, 10:03:00 AM

「また会いましたね。」
これは私が大学生の時だった。
初めての一人暮らしで、お母さんとお父さんに助けを貰いながらも、大人に少しずつ近づく為に一人暮らしを頑張ってる。
出来るだけ両親からの仕送りだけを頼りたくは無いから、私はアルバイトもしてみる事にした。
親が過保護な部分もあって、高校生の頃、周りの友達みたいにバイトをした事が無かったから、大変と思うことも多々あった。
だけどその分、自分自身が「成長できた。」と感じれるときもあるんだけどね。
そんな時に、私は大学に行くときによく会う隣人さんが居た。
見た目は若いけど、多分私よりかは年上。
いつもゴミ袋を片手に、私に挨拶を積極的にしてくれた。
「おはようございます…」
目の下にわかりやすいぐらいの隈を作って、煙草を雑に咥えながら私に挨拶をする。
「お、おはようございます…」
苦労をしていそうな隣人さんの顔を見た私は、苦笑いをしながら挨拶を返すしか無かった。
「えーっと、えー…」
手元にゴミ袋ともう一つ、何かを持っている隣人さんは、多分だけど私の名字を思い出そうとして、何かを言おうとしていた。
「…榊(さかき)です。」
私がそう言うと隣人さんは思い出したかのように一瞬目を丸くして、私にこう言った。
「榊さん、次の掃除当番…」
意志が弱そうな隣人さんは回覧板のような物に「掃除当番」と書かれたものを私に渡した。
「あ、ありがとうございます…!」
隣人さんは「いえいえ。」と私に言い、仕事に向かっていった。

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