私は毎日神様に願った。
私は決まって神様にこう願うのだ。
「毎日が幸せでありますように」と。
毎日決まって寝る前にそう願った。
晴れでも雨でも曇りでも雪でも嵐の日でさえも欠かさず願い続けた。
何年も願い続けたある日のこと。
願いが届いたのか、突然、神様が舞い降りてきて、こう言った。
「貴方の願いは叶えられない」と。
何故か、と私は神様に聞いた。
「幸せはどの人間も平等に不幸の分だけあるのだ。不幸があるからこそ、幸せを感じるのが人間なのだ。その幸せの有難さを感じるのは不幸があるからなのだ」と神様は答えてくれた。
そうか、そうなのか、では、私はこれからどうしたらいいのか、と私は神様に聞いた。
「日常を大切にしなさい。そして不幸を決して悪いように捉えず、前を向いて進みなさい」と神様は答えてくれた。
そして、にこりと微笑んで跡形もなく消えた。
それから私は今日まで神様に会うことは二度と無かった。
それ以来、私の人生は様々な幸せと不幸を行ったり来たりしていた。
そしてこれからもそういう人生を歩んでいくのだろう。
日常を大切にしながら、今日も私は前を向いて進む。
■テーマ:神様が舞い降りてきて、こう言った。
誰かのためになるならば、自分のことを犠牲にしても良いと思っていた。
だから、僕はずっと何一つ文句を言わず業務を続けてきた。
休みの日も惜しまず業務を続けた。
そうしているうちに、僕のことを「働き者だ」「優等生だ」「模範生だ」と言われるようになった。
でも、それは違ったと気づかされた。
それはたった今。
急に僕の身体は動かなくなった。
目も、思考も、動き続けるのに、身体だけはぴくりとも動かない。
手も、足も、首も、指先すら、動かない。
……僕はもう、何もできなくなってしまったのか?
あぁ……そうならば、もっとやりたいことやっておけば良かったなぁ。
あの中華料理屋にまた行きたかったなぁ。
いつものラーメン、食べたかったなぁ。
また友達の彼と遊びに行きたかったなぁ。
今やってる話題の映画、観たかったなぁ。
彼女とも一緒に遊びたかったなぁ。
というかもっと彼女を大切にすれば良かったなぁ。
……なんて、今更、か。
なんだか……なんだか、悲しい。
もっと、人生、楽しめば良かったなぁ……。
僕の目から涙が出てきた。
涙が零れた瞬間に、目が醒めた。
そして、気づいた。
あぁ、夢か、と。
僕はホッとしたのと同時に、
自分のために時間を使いたくなった。
窓越しの朝日が、昨日と違って見えた。
■テーマ:誰かのためになるならば
「貴女はそこにいればいいんだ」
私が生まれてからずっと言われ続けていた言葉。
──私は籠の中の鳥。
外へ行くのは学校と社交場へ行く時だけ。
そのほかの世界のことは知らない。
最初は当たり前だと思っていた。
だけど、服が小さくなる度に、外への興味が湧いてきた。
「貴女はそこにいればいいんだ」
両親、親戚、使用人……全ての人が口を揃えてそう言った。
だから、私も思うようにした。
知らないフリをすればいい、それが幸せなんだ、と。
──私は籠の中の鳥。
綺麗なドレスを着た私はふと夜空を見上げた。
鳥だって、空の星くらい見て世界を想像するくらいの自由はあってもいいよね?
「……星を見るのがお好きなのですか?」
不意に声がした。
振り返ると、燕尾服を着た若い男性がにこりと微笑んでいる。
「……いえ、ただ見ていただけです。世界はどれほど広いのかと……あ」
しまった、と思った。
明らかに失言であった。
……そのはずだった。
「ええ、分かります。世界は私達の知らないほどに、想像も出来ぬほどに、色んな人種、色んな生物、色んな文化が広がっているのかと思うと、胸が躍りますよね」
彼はそう言った。
彼は間違いなくそう言った。
一見真面目そうな彼がそう言ったのだ。
「……変だと思わないのですか?」
「何がです?」
「私が、ある一族の娘である私が、世界を知りたいだなんて、非常識だと……」
私がそう彼に問うと、彼はくすりと笑ってこう答えた。
「貴女が知りたいと思ったことは、例え世の中の役に立たなくとも、必ず貴女の役には立つはずです。その好奇心・探究心は忘れてはいけませんし、捨ててはいけません。……貴女は世界を知って良いのです」
その言葉を聞いた瞬間、何かがはじける音が聞こえた。
私の世界が変わった気がした。
──私は籠の中の鳥。
──でも、その籠を今、貴方が解き放ってくれた。
■テーマ:鳥かご
1人の方が楽だ。
1人だと辛い思いをしなくて済むから。
人と関わるとろくなことがない。
ある人には怒られるし、ある人には呆れられるし、ある人には失望される。
本当に生きることは辛い。
「お前って最悪だな」
本当に、辛い。
嗚呼、1人で生きた方が幾分か楽だ。
「そいつって最悪だな」
ふと目の前に人がいた。
「お前も悪いかもだけど、お前だけのせいじゃないじゃん?」
“お前”って言われてるはずなのに、不思議と嫌な気持ちにならない。
そして、安心する。
「まぁ、お前がそいつより大人だったってことで!」
その人はそう言って笑う。
いつの間にか、自分の気持ちが軽くなった。
「……話、聞いてくれてありがとう」
「いいってことよ。お前の話ならいくらでも聞くよ。自分も聞いてもらってるしね」
そう簡単に言ってくれる。
自分が嫌だった“そいつ”と同じ人のはずなのに。
「……本当に、ありがとう」
───自分の友達でいてくれて。
■テーマ:友情