千冬

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10/5/2025, 1:21:34 PM

 今夜は良い晩ですね。月の綺麗に見える、良い晩。ほら、彼方の、空が見えますか?あんなに、深く、酔った様な藍をしているでしょう。その癖、雲は、紅く焼けているのだから、不思議なものです。眩しくて私は苦手なのですけれど…。


 流れ星が落ちたと誰かが言いました。私は、直ぐにその方を見ました。そして、暫く、じい、と見詰めて居ました。
 流れ星がかえってくる訳でもなかろうに!
 そんな私に誰かは言いました。
 「この、あっちの方の、ビルの上辺りよ、そこから、一秒くらい、落ちたのよ、近かったのよ」
 と。そうして、その人もまた、その方を、じい、と見詰めるのでした。
 流れ星がかえってくる訳でもなかろうに!


 朝カーテンを開けたらば
 空へと登る花の子に

 出会うて擽る蝶が舞って

 ああ今は春なんだと知る


 朝日に消えゆく星々は
 どうしてああも、弱々しい?

 夕になればきらきらと
 輝き出すばかりだというのに

 夕の何が良い。






#6

10/4/2025, 1:30:46 PM

 なんともああ、醜い生涯である、人のいう道理とはかけ離れてある、悔いようと悔いようと、償いを必要とする人は居るもんで、逃げてばかりの自分が嫌になる、それで良いじゃないかといっても、聞く耳持たないのである、どうか私の為に、「はい」と、「その通りだ」と、いってはくれないか。

 私は極めて正常な人間です



 いつだって本質というものは
詰まらない

いや、本質を追い求める様が詰まらないのか

それが正解なのかも分からないのに、走って手を伸ばして触れようとするそのザマが



詰まらないといいながら必死に、必死に指先ふるわすのが私である



「だいたい、技法っていうのはぁ、ものを作る過程で表現に使うだけであってなぁ、その技法を使おうと思って使うもんじゃあ無いんだ」



いつだってそう気づかず馬鹿に生きていりゃあ良いのである、
真実をしっているのが自分だけであろうと、
書くのは自分なんだから、どうとでもできる


どれだけ生きたとかなんて重要じゃない、とはいっても

あとどれだけの年月があればあ、もっと多くの作品が生み出せるのになあ、と



巫山戯た巫山戯た、戯けろが、
一生そうやって間抜けな振りを



無闇矢鱈!であるのだ、
荒削りでしかあ無い、
技術というのはそうやって着けるもので無い、
だがそれが一番魂に近い



けれど



もう少し、丁寧に、繊細に、と、気を使って、



それが出来ないで魂をあらわそうなんて言うもんじゃ無い







だから

囚われた形式に入ったままの奴は嫌いなんだ



それで人をましてや書く人を

どうしようとか考えるな







近寄ろうとされるのは気分が悪いものだ











肉がえぐれると
埋まっている骨が露出する

細く

折れてしまえばといってもそれは
標識の如く僕を支え

それだけになろうとも
僕にペンを持たせる

ひとつきも願ってはいないのに

このペンは
僕の骨だ。







桜餅を食べましょう
それは春の特別なお菓子であって
甘く塩っぽく
ああああああああああああああああああああああああ
兎に角おいしい。
おいしいのである。

桜というのは
枝にそのまま花の咲いたかのような
あんまり無垢でかろやかな
薄づく花びら
ちぎるときのつう、と裂けるのが
大層愛おしい

直ぐにそれは酸化して
誠がつき
色も褪せ染み
短い命なのだ
次につけられる実も大して長生きはしない。

美しさのみの
そういう生き物なのだ。







ならば私は

茨の有る薔薇なんかだろうか



今日だけ



詰まらない独白を許して



#5

10/3/2025, 7:22:31 AM

 何処に居るのですか

 私が見えますか
私の声が聞こえますか

 出来るだけ近くに行きますから

聞いて下さい

 私の書いた詩を



よくやったと

 言って下さい。

空にいるのですか

 宙を漂っていますか

霧になって
 散ってしまいましたか



遠くに木の枝の折れる音

 振り返りはしませんよ

きっと貴方ですから






#4

10/1/2025, 3:00:07 PM

眠いので別のを。

(タイトル無し)





ここには陽(ひかり)は照らさない

夕焼け終わると無力なもんで
たちまち寝床へ転がる身

ただ、水の飛沫の、
冷こいのを感じたいと、

あの川の下りの、
柔らかいのを想像して、

ここには湧水流れんで
ここには砂利道通らない

電灯つけずに、動かずに

ただ、
冷こいのを感じたいと、

眩しいのを手で避けながら、
冷こいのを感じたいと、

動く事せずに、
闇の中で。





#3

9/30/2025, 3:24:58 PM

「珈琲」(即興フィクション)


 「う…っ、」
 思わず、むせてしまった。乾いた咳が引き起こされる。喫茶店や、職場にいる人々は、これをどう飲んで、美味しいと言うのだろうか。
 コップに入った珈琲を、見詰める。ベッドの横の、窓を開けて居たので、感じていた、そよ風が止み、珈琲の波紋が凪いで、自分の顔が映る。そうして直ぐに、また、ひと口、飲む。吐き出さない様に、零さない様に、しっかりと、マグカップの持ち手を握って。
 私は今、ただの憧れで、珈琲なんかを飲んでいる。それも、普段なら寝ている夜更けに。案の定、目は冴えるし、苦いし、不味いし、散々だ。正直、少し、後悔している。
 私の憧れている人は、いつも、眠れない夜に、珈琲を飲むのだと、言っていた。余計に、眠れなくなるのではないかと、聞いてみた日には、眠れないのを、珈琲のせいに出来るから、それで良いんだよ。なんて言われて、少し、心配になった。
 毎日毎日、彼は、飲んだ珈琲の豆の話を、していたから。
 私が今飲んでいるのは、彼が、話していた豆の中で、一番、最近の物だ。これが、本当に、苦い。より、カフェインの強いものだと、言っていた。
 ほんの少しずつ、着実に、飲み進めていた。飲み始めの頃に見つけた星座は、もう、沈んでしまった。熱さで誤魔化されていた苦味も、徐々にあらわれてくるのだが、それが大変辛かった。けれども、牛乳や砂糖は、入れない。彼が、入れない派だったから。
 息を止めて、一気に、流し込むけれど、苦いものは、苦かった。
 もう、晩御飯より、朝ごはんの方が、近いくらいに、夜が更けていた。けれども、飲み終わるのには、もう少し時間がかかりそうだった。
 夜の味がしたから。眠れない夜の、涙の味がしたから。
 揺れる珈琲が、また私を映していた。

 不味いじゃん、と、上の方にある星に向かって、呟いた。






#2


「旅は続く」を書きたかったのですが、明るいお題は苦手です…。

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