千冬

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 今夜は良い晩ですね。月の綺麗に見える、良い晩。ほら、彼方の、空が見えますか?あんなに、深く、酔った様な藍をしているでしょう。その癖、雲は、紅く焼けているのだから、不思議なものです。眩しくて私は苦手なのですけれど…。


 流れ星が落ちたと誰かが言いました。私は、直ぐにその方を見ました。そして、暫く、じい、と見詰めて居ました。
 流れ星がかえってくる訳でもなかろうに!
 そんな私に誰かは言いました。
 「この、あっちの方の、ビルの上辺りよ、そこから、一秒くらい、落ちたのよ、近かったのよ」
 と。そうして、その人もまた、その方を、じい、と見詰めるのでした。
 流れ星がかえってくる訳でもなかろうに!


 朝カーテンを開けたらば
 空へと登る花の子に

 出会うて擽る蝶が舞って

 ああ今は春なんだと知る


 朝日に消えゆく星々は
 どうしてああも、弱々しい?

 夕になればきらきらと
 輝き出すばかりだというのに

 夕の何が良い。






#6

10/5/2025, 1:21:34 PM