小砂音

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5/10/2023, 5:12:21 AM

#44 忘れられない、いつまでも。

降りしきる眼前の情報
静かな森に閉じ込められた
忘れたくない記憶の淵に
流れ込んできては
様々なものと絡み合って風化させる

あなたは白い掌だ

わたしにそっと触れてきて
石碑の文字を慈しむように
湿った緑の覆いを払ってくれる

涼しく、孤独で、密やかな深淵に
植物を気にしながらも
知りたいという欲望に駆られて
立ち入ってくる

死体は実のところ、どこか
掘り返されたがっているのかもしれない

だからわたしは
安らかに埋葬された記憶を
忘れることができないのだ
いつまでも、ずっと

5/8/2023, 10:33:47 AM

#43 一年後

過去に確かに在った
ある一定の一年間を思い返してみる
肩書きの変化はあれど
ゲームのログのような
思い出の証のためだけに作られた
形に残るお土産めいたものは
あまりなかった

作品を作ることは
自分を遺すことだ

だから、つまり、わたしは
わたしに纏わるものを
なるべく残しておきたくなくて
持ち物を減らそうという思考を取ってきたけれど
その実、結局は、
わたしの毛嫌いしている
「わたしが生きた証」を創作することに
拘り続けている

認めたくはなかったけれど
きっと、一年後、一年前の今を物語る
作品を見返したいと思うのだろう
x歳x日の自分を
少しでも覗き込んでみたいと思うのだろう
まるで他人のように

だからわたしは
毎日続けようと思う

書くことと読むことを
毎日続けようと思う

5/7/2023, 11:49:36 AM

#42 初恋の日

ぼくは恋をしたことがないし
恋がどういうものなのかも分からないし
知ることのできない人間だ。

だけど一昨年、旗日が無いという理由で
6月に「初恋の日」という
時代に逆行するような祝日ができて
その恩恵にはあずかっている。

雨の音しかしない静かなアパートで
コーヒーを飲みながら本を読んでいる。
仕事から逃れ、
のびのびと休日を満喫している。

でも、それでも。
結局は読書に集中することができなかった。
ため息が、雨音に呑まれて消えてゆく。

今日が一体何を祝う日なのか、
祝日を作った奴らを含め
ぼく以外の人間だって本当のところ
誰一人として分かっちゃいないのだ。

5/7/2023, 6:54:36 AM

#41 明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。

叶わないと
分かりきったことを願うなら
きみのことがいい

世界がなくなる前日に
虚しくて
ありきたりで
自分勝手なことしか願えない

ここまで来たら
自己嫌悪だなんていう
どこか青い感情を通り越して
汚いものはすべて
墓場まで
ぼくごと仕舞い込んでしまいたくなった

最後のとき
きみはぼくの隣を選びますように……

きみのしあわせを願えないぼくは
世界がなくなるその瞬間まで
ゴミ屑のような人間性で在るべきだ

5/5/2023, 12:31:51 PM

#40 君と出逢ってから、私は・・・

君と出逢ってから、わたしは。
夜に眠れない理由が変わってしまった。

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