小砂音

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12/2/2024, 7:15:50 PM

#59 光と闇の狭間で

言葉を大切にしているのに
声にならなかったものを愛している


誰にも伝わらないものが
言葉以外の何かに書き換わっていて
冷えきった体を誤魔化すための掠れた鼻歌になったり
プラットホームに立つ人の背中を押したりしている

誰もいない、ただわたしのためだけにある家にも
ブレーカーを落としたような夜が来る
何もない部屋の窓際に横たわっていると
この国は希望とは程遠い光であふれていることに気がつく

こちらにいても
そちらにいても
何も変わりはしないんだ
見せかけの明暗

きっと真実は
生真面目で融通のきかない月日がただ
照らしたり沈んだりしているだけ

繋いだ手が離れた
愛しい人は自由な旅人になった
まだ生産者のわたしは
チカチカと目まぐるしい点滅を浴びながら
前へと押し流されていく

ここは狭間だ



「……。」

暗がりで拾う、遺された音
そこに言葉はなくて
輝く想いはあった

そこで光った
確かにあった

ここにいなければ
確かめられないこと
ここにいなければ
確かめられない音

9/16/2024, 3:02:54 PM

#58 空が泣く
いつもあなたはそうやって
我慢するわたしの代わりに
空色の傘を開かせてくれる

8/27/2024, 3:10:26 PM

#57 雨に佇む
雨に打たれなければ、癒えない感情は存在する。
雨に打たれなければ、満たされない感情も存在する。
雨に打たれなければ、生まれなかった感情も存在する。
雨に打たれなければ、流せない感情も存在する。

そういうものをわたしは幾つか知っている。
きっと誰しもが知っている。

だからドラマや映画などで、使い古されている。

そんなことを、雨の降る窓辺に佇んで、コーヒーを飲みながら考える。
雨の降り頻る日曜日の朝は、退屈なのに、このようにどこか好ましい。

8/26/2024, 3:28:06 PM

#56 私の日記帳

日記でさえ、他人に読まれてしまうことを想定して、うまく書けなかった。だけど、他人の目を気にしすぎることが損だということに気づいた最近は、日記が書けるようになったし、続くようにもなった。
包み隠さず書くコツは、固有名詞もきちんと記すこと。汚い言葉も拙い言葉もそのまま書くこと。そして、柔らかく呼吸するようにするすると書けるボールペンを選ぶこと。
正直、楽しいことや嬉しいことがあった日は書く気がしない。苦しくて、辛くて、むかついた時にしか、書きたい衝動には駆られない。たぶんわたしにとって、上手く言葉にできず、整理できない感情を抱くことが苦痛なのだと思う。
そしてありのまま書き連ねたあとは、一種の開放感が生まれて、ぐしゃぐしゃで眠れなかった脳味噌にも、羊が一匹二匹……とやって来るようになる。
今日も気づきを書いていた。今日は珍しく、他者に対する嬉しい気持ち。
日記を通して、言葉を知りたい気持ちも、育み続けようと思う。やはり言葉は、よく分からない気持ちを表すために、とても大切なものだ。

6/12/2024, 3:37:51 PM

#55 好き嫌い

――好きです。
予期せずそう言われた瞬間、わたしはその人のことを嫌いにならざるを得なくなった。
家族がいるのに、なぜそんなこと言うんだろう。
混乱した。
悲しかった。
とてもやさしい、いい人なのに。
一人の人としては好きではあった。
それなのに。
なんて自分勝手な、残酷な告白をするんだろう。
その言葉が大切な人全員を傷つける言葉だと、どうして気づかないのだろう。

わたしは惨めにもなった。
恥ずかしくもなった。
家族に憧れていて、でも自分の事情で人よりそれを得るのは困難で、そんなわたしの事情などもちろん知らず、その人はわたしに好きといいながら、家族との幸せをわざわざ名指しで垣間見せたりする。

法律が違ったら、国が違ったら、価値観が違ったら、ショックも受けず、うれしいと思うのだろうか。

この「好き」と「嫌い」が不思議なまでに、愚かなまでに、共存してくっついている「好き嫌い」は、なんなのだろう。

そしてそんな好き嫌いを心に棲まわせながら、無視をして、何事もなかったように接しているわたし。
仕事に支障が出ないように、距離を置きすぎないように、でももちろん近づかないように。自分勝手に、今まで以上でも以下でもなく接している。

サイコパスは、二人いるのかもしれない。

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