小砂音

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#42 初恋の日

ぼくは恋をしたことがないし
恋がどういうものなのかも分からないし
知ることのできない人間だ。

だけど一昨年、旗日が無いという理由で
6月に「初恋の日」という
時代に逆行するような祝日ができて
その恩恵にはあずかっている。

雨の音しかしない静かなアパートで
コーヒーを飲みながら本を読んでいる。
仕事から逃れ、
のびのびと休日を満喫している。

でも、それでも。
結局は読書に集中することができなかった。
ため息が、雨音に呑まれて消えてゆく。

今日が一体何を祝う日なのか、
祝日を作った奴らを含め
ぼく以外の人間だって本当のところ
誰一人として分かっちゃいないのだ。

5/7/2023, 11:49:36 AM