もう、決して離す事が無いように。
震える君の手を、そっと優しく握るの。
---二作目---
ただ、何となく外に出て。
何となく、枯葉の落ちる道を歩いて。
何となく、間に静けさが宿って。
...何となく、どちらともなく、手を取り合って。
そんな小さな事で、顔が熱くなって。
思わず首に巻いていたマフラーで、顔を隠してしまう。
そんな俺の姿に、あいつは少しだけ笑ってて。
少しだけ不服な気持ちになる。
...二人の手は、優しく握られたままだった。
#手を繋いで
144作目
たった一言。
そのたった一言を、伝えられなくて。
今日も言えなかった感謝と後悔が、喉の奥に突っかかってるの。
---二作目---
お前にそんなつもりはなかっだろうに。
ただ、お前の底無しの優しさが、俺にも降り掛かっていただけだと言うのに。
こんなに醜い劣情を抱いて。
...こんな俺じゃあ、お前の傍に居られない。...だから俺はお前の元から消えようと思う。
...だから、どうかどうか幸せになってくれ。
どうかどうか、穏やかな日常を過ごしてくれな。
...嗚呼。最後に、一つだけ。
俺なんかに、暖かくて優しい愛情をくれて、ありがとう。
今まで俺の事を「相棒」と言いながら慕ってくれて、ありがとう。
...勝手にお前のことを好きになって、ごめんな。
#ありがとう、ごめんね
143作目
今はただ、ここで雨を降らしてしまう事を許して欲しい。
誰にも悟られないように、隅っこでやるからさ。
...だから、今だけは。
私の顔を濡らす、冷たい雨を流させて。
---二作目---
部屋の片隅で、じっと蹲っていた。
...弱い俺は、太陽の下には出られないから。
隅っこに居ないと、周りの存在感に押し潰されてしまいそうになるから。
「お前、大丈夫か?」
...それでも、こんなはなんの取り柄もない、端っこに居るだけの俺の事すら。
優しいお前は見つけてくれるから。
こいつが真ん中に居る時の話を、沢山話してくれるから。
...少しだけ、君がいる場所に、行ってみたいと思ったんだ。
無理かもしれないけれど、お前が居たら、俺も太陽の元に出れるかな。
#部屋の片隅で
142柵目
「好きして欲しいな」
...さてさて。
君にこの言葉の意味が、理解できるかな?
---二作目---
...全部、全部。
本当の気持ちを、裏返して。
「死にたい」を「生きたい」に。
「辛い」を「幸せ」に。
「苦しい」を「楽しい」に。
「大丈夫じゃない」を「大丈夫」に。
ただでさえ弱い俺は、弱音を吐いちゃいけないから。
本音を言っちゃいけないから。
自分の心を偽るようにひっくり返して。
それで毎日毎日、笑顔で笑うんだ。
...ね?だからさ。俺はお前の事。
「好きじゃないよ」
#逆さま
141作目
目を瞑ってしまえば、朝が来る。
そんな当たり前の事が、只々怖い。
だから今日も、枕を濡らして朝日を待つの
---二作目---
夢に焦がれる夜がある。
ただ虚しいだけの、幻想に溺れていたい夜がある。
朝が来れば、現実を見なくてはならなくなるから。
この、静かで、誰もが夢へと堕ちている、この時間に。
まるで子供がイタズラを隠す様に、こっそりと。
...あいつに愛される、幸せな幻想を描く。
伝える気も、叶える気も無い。
ただ、この時間さえあればいい。
それだけで、俺は十分だから。
冷たい布団にくるまって...枕が濡れるのは、多分寒さのせいだ。
きっとそうなんだ。
...嗚呼、今日も眠れないな。
#眠れないほど
140作目