#きっと明日も
あいつ俺に、別れを告げるだろう。
目尻を下げた、苦しそうな顔で...。それでも、微笑みながら。
あいつは...自分へ向けられるいい感情に疎い。
逆に、一部から向けられるい感情ほど、良く受け取りやすい。
そしてあいつは...優しいから。
俺がどんなに好きだと伝えても...
どんなに愛してると伝えても...
きっと、別れ話を切り出し続けるんだ。
自分の気持ちを押し殺してでも、相手の--俺の幸せを、願い続けるんだ。
...だから、せめて。
こいつが、少しでも幸せを多く感じられる様に。
少しでも、俺の気持ちを素直に受け取ってくれるように。
俺は明日も、空へと願い続ける。
74作目
君が隣で寝静まって
君の頬をそっと撫でて
そこで初めて
一人の長い夜が始まる
#静寂に包まれた部屋
73作目
※タヒの表現があります。
苦手な方はご注意を
「さようなら」
その言葉の本当の意味を、その時の俺は理解できなかった。
いつもと言い方が少し違うな、程度の認識だった。
思い返してみれば、表情にも言動にも、他にもおかしかった所が沢山あった。
俺があの時、本当の意味で、あいつの言葉を理解出来ていたのなら
俺がもっとあいつの事を気にかけてやれていられれば
俺が
俺が...
...あいつの苦しみに...気づいて...寄り添ってやれていれば...
今になって、現実を突きつけられて。
やっとその意味に、想い気づいて。
本当、何が天才だよ...。
後悔と悲しみが、涙と一緒にぼろぼろと零れていく。
.....あいつはいつも、笑顔で明るかった。
いつもの帰り際も、あの日でさえも、ずっとそれは変わらなくて。
けれどあれは、あいつなりの、心配させないようにと言う気遣いだったのかもしれないと
あいつ自身の想いを隠す、仮面だったのではないかと
今になって、そう考えてしまう。
...あぁ、けれど、けれど...
「お前の最後の顔が----」
俺は、あいつの真似をして、笑顔を作った。
別れの時くらいは、笑顔で迎えたかったから。
----
眠りについた彼の表情は
今までで一番の、安らかな笑顔を浮かべていた
#別れ際
72作目
突然雨に降られて、俺は近くの駅で足止めを食らってしまった。
今日は全日晴れ予報だった為、沢山の人がここで雨宿りをしていた。
雨模様の空を見ていると、何となく気分が落ち込んで、虚しい気持ちになるから、あまり好きではなかった。
「早く帰りたいんだがな...」と言う気持ちも相まって、心の中で愚痴を零しながら、小さく溜息をついた。
「こんな所にいたのか...結構探したぞ...」
話しかけられたような声が聞こえたので、視線を動かしてみると、
雨の中傘を差しているあいつがいた。
「...は?なんでお前居るの?」
ポロリと思いついた疑問が零れてしまった。
「貴様が突然の雨で困っているかと思ってな...迎えに来てやったんだ、とりあえず帰るぞ」
と上から目線に言われ、当然のように傘の中へと手を引かれた。なんだこいつ年下のくせに...なんて思いもしたが、実際困っていたのは事実だっ
たので素直に「...ありがとな」とお礼を言った。
「...素直に礼を言うなんて...明日は大雨でも降るのか?」
「現在進行形で降ってんだろクソガキ」
俺が怒りを含ませながらそう言うと、冗談だと言わんばかりにふとした笑みを零した。
...その顔はずるいと思う。
「...そんなにムキになるな...いいからさっさと帰るぞ」
「へいへい、分かりましたよ...あと、ムキになってねぇからな?」
...そんな感じで談笑しながら、二人で帰り道をゆっくりと歩いていった。
偶には、こんな雨の日も悪くは無いな...と思いながら。
--二人の手は優しく繋がれていた
END
#通り雨
71作目
微風がふわりと頬を掠め、空を見上げれば、色鮮やかな赤やオレンジ、黄色の葉々がひらりゆらりと揺れ動く姿が目に写る。そしてその隙間からは、太陽の木漏れ日が天から降り注ぐ。
そんな広葉樹の下で、静かにあいつと本を読むことが好きなんだ。
木の幹に寄りかかって、それで柄にもなくお互いに肩を寄せあって、
その間に言葉なんて無いのに、
静かに本を読むこの時間が、凄く落ち着けて、安心できて...好きなんだ。
#秋🍁
70作目